4.1. 迷惑メールと判定されない場合には
迷惑メールフィルタには学習能力があるものの、100%の検出精度は期待できません。迷惑メールを送信する業者はメールヘッダの偽装技術に長けているため、転送経路などの情報は一定しないうえ、メールの文面も変化します。また、迷惑メールデータベースには、迷惑メールと判定されたメールの情報が反映されるため、迷惑メールを通常のメールとして放置したり、ただ"迷惑メール"メールボックスへ移したりするだけでは、迷惑メールフィルタの精度向上に貢献しません。
フィルタによる自動検出に失敗した迷惑メールは、発見次第削除することは避け、手動で迷惑メールに設定することが上策です。必ずツールバーの[迷惑メール]ボタンをクリックし、迷惑メールとしてのフラグを立ててから、"迷惑メール"メールボックスへの移動や削除などの処理を行うようにします。
●図7 通常のメールと判定された迷惑メールは、[迷惑メール]ボタンをクリックして手動でフラグを設定する
4.2. 自動モードへ移行する
迷惑メールフィルタの初期状態として設定されているトレーニングモードでは、迷惑メールと覚しきメールは薄茶色に色分けされますが、通常のメールと同じ"受信"メールボックスに保存されます。
自動検出の精度が高まったと感じた場合には、自動モードへ移行すると、通常のメールと迷惑メールを自動的に仕分けることができます。環境設定パネルの「迷惑メール」タブを開き、「"迷惑メール"メールボックスに移動する(自動)」ラジオボタンを有効にすると、その時点で存在する迷惑メール(自動判定されたものを除く)を移動させるかどうか確認したあと、"迷惑メール"メールボックスが作成され、以後迷惑メールと判定されたメールが自動的に移動されます。
●図8 自動モードへ移行するときには、迷惑メールを"迷惑メール"メールボックスへ移動するかどうか確認される
4.3. トレーニングをやり直す
迷惑メールフィルタは、学習した内容をライブラリフォルダ上のデータベースファイル(~/Library/Mail/LSMMap2)に記録します。独自のフォーマットが用いられるため、蓄えられた情報を閲覧したり任意の内容を書き込んだりすることはできませんが、トレーニングを最初からやり直すことは可能です。迷惑メールフィルタが正しく機能しない場合など、データベースになんらかの問題が生じた場合には、この方法が有効な解決策となります。
トレーニングをやり直す場合には、環境設定パネルの「迷惑メール」タブを表示し、[リセット...]ボタンをクリックします。現れた「迷惑メールデータベースのリセット」ウインドウで[はい]ボタンをクリックすると、データベースファイルの内容は消去されます。
●図9 [はい]ボタンをクリックすると、迷惑メールフィルタデータベースが初期化される
5.1. ISPの迷惑メールフィルタサービスとの連携
Apple Mailでは、インターネットサービスプロバイダ(以下、ISP)が提供する迷惑メールフィルタサービスと連携する機能が用意されています。設置された迷惑メールフィルタの種類や設定方法にもよりますが、迷惑メールと覚しきメールにはヘッダ部分に「X-Spam-Flag: YES」といった目印となる行が挿入され、迷惑メールかどうか判定する手がかりとなります。
ISPの迷惑メールフィルタサービスを利用する場合には、環境設定パネルの「迷惑メール」タブ上にある[インターネット・サービス・プロバイダが設定した迷惑メールヘッダを信頼する]チェックボックスを有効にします。
●図10 契約しているISPが迷惑メールフィルタサービスを実施している場合には、検出精度をより高めることも可能
5.2. 任意のヘッダを手がかりにフィルタする
プロバイダの迷惑メール識別機能が「X-Spam-Flag」以外のヘッダを挿入する場合※には、そのヘッダを条件として追加する必要があります。たとえば、迷惑メールのヘッダに「X-Spam-Status: YES」行を挿入するメールサーバの場合は、以下の手順で作業を行います。
※:どのようなヘッダが挿入されるかは、メニューバーから[表示]→[メッセージ]→[すべてのヘッダ]を選択すれば確認できる
●図11 メッセージヘッダを追加する
●図12 追加したメッセージヘッダに条件を設定する
5.3. 「迷惑メールを送信者に戻す」前に
Apple Mailには、迷惑メールを送信元に送り返す機能が用意されています。対象のメールを選択し、メニューバーから[メッセージ]→[戻す]を選択すると、「Returned mail: User unknown」というタイトルでメールが返信され、メールアドレスが存在しないため逆送されてきたメールとの錯覚を送信元に与えることができます。
ただし、不特定多数に対し送信される迷惑メール(スパム)に対し、この機能は利用すべきではありません。一見したかぎりではメールが返送されるように映りますが、転送経路の情報は通常どおりメールヘッダに記載されるため、識者がメールヘッダを調べればメールサーバにより逆送されたものではないことは一目瞭然です。スパム業者は、返信があったことをもってそのメールアドレスが“生きている”-- 広告としての有効性はともかく内容は確認されている -- と判断するため、反対に迷惑メールが増えてしまう可能性もあります。
いわゆるスパム業者は差出人情報(メールヘッダーの「From」行)を詐称する場合が多く、メールを送信しても宛先不明で戻ってくるケースがほとんどです。スパムと覚しき迷惑メールには、安易に返信しないほうが賢明でしょう。
●図13 迷惑メールを“戻す”ことが必ずしも得策とはかぎらないことに注意
《PREV》 |