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最終更新日:2000-11-17
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第1回 製品紹介セミナー レポート
「WebObjects (Webアプリケーションサーバ統合開発運用ツール)」

左から石山氏、鷲滝氏 講師:鷲滝薫氏(アップルコンピュータ株式会社)
石山正太郎 氏(アップルコンピュータ株式会社)
[資料(リンク)]
 アップルコンピュータの「WebObjects」は、柔軟性、拡張性に富んだインターネットソリューションを提供する、Webアプリケーション開発・運用のためのツールだ。セッションは、まずはじめに鷲滝氏からこのツールの概要説明が行なわれ、そのあと実際のデモを交えた解説が石山氏によって実施されるという構成となった。

 冒頭、鷲滝氏は「このWebObjectsは社内でも非常に重要なポジションにある」と述べ、どうしてもi-Macをはじめ、マスコミ等においてもコンシューマ向けの製品の露出度が高いアップルコンピュータにおいて、企業のソリューションに向けて提供されているこの製品が、とりわけ重要な役割を担っている旨を強調した。

デモ画像 WebObjectsは、従来より企業内で蓄積されてきたデータベースや企業内で構築されてきたシステムを、社外に向けての情報発信やBtoBなどの電子商取引という側面で活用する、つまりインターネットを介して外部に向けて情報ビジネスを展開していくうえで、強力かつ柔軟な開発・運用環境を提供するものである。1995年の出荷開始以来、すでに多くの実績を上げてきており、現在全世界で3000ユーザー、6000サイトのシステムを支えている。鷲滝氏によれば、最近では大企業のみならず、中小規模のユーザーにも急速に受け容れられつつあるとのことだ。これは、たとえばデータベースであればOracle、Sybase、あるいはODBC、サーバーもWindows NT、あるいはSunやHPのUNIXサーバーといった、あらゆるデータ接続環境、運用環境に対応できるWebObjectsの柔軟性とスケーラビリティの高さを示している。

 WebObjectsは、現在4.5という製品が提供されており、このバージョンでは最新のXMLを完全サポートするなど、より高いポータビリティが実現されている。開発言語としてはJavaをはじめ、ANSI C、C++、Objective-Cの利用が可能だ。言語については「従来はC/C++、Objective-Cが主に使用されてきたが、現在ではJavaが主流となっている」(鷲滝氏)ということで、次バージョンとして100% Pure Java対応の「WebObjects 5.0 for Java」が近く発売されることになっている。

 一方WebObjetsは、Webアプリケーションの開発・運用ツールとしての利用以外に、Mac OS XのCocoaアプリケーション開発環境としても位置づけられている。したがって、Mac OS X上のスタンドアロンアプリケーションを開発するユーザーにとっても、もっとも有力な選択肢となる。以上の鷲滝氏の説明に引き続いて、以降セッションは、後半の石山氏のプレゼンテーションに入っていく。

 WebObjectsは、Webアプリケーションの統合型開発環境と運用環境をオールインワンにしたツールである。そして、開発環境としてのWebObjectsの特徴は何と言っても、オブジェクト指向技術を全面的に採用していることだ。たとえば、WebObjectsにおいては通常はプレーンテキストに過ぎないHTMLを、ロジックの中でオブジェクトとして扱える。これにより、HTMLオブジェクトの再利用が可能となり、同様のHTMLを何度も作成する必要がなくなる。また、データベースのテーブル構造をリレーション等の整合性も含めてすべてオブジェクトにマッピングし、オブジェクトとして扱うことを可能にしている。このため、アプリケーションオブジェクトからのデータベースのハンドリングも、オブジェクト間のメッセージのやり取りによって行なえるため、SQLの記述が不要になり、各種データベース固有の処理を吸収できるといった利点が得られる。この例に見られるように、WebObjectsではオブジェクト指向の利点を活かし、徹底した開発効率の向上がはかられているのである。そのほか、HTML、つまりユーザーインターフェイス部分とロジックを完全に分離し、拡張・修正といった保守性を高めていることなどもWebObjectsの大きな特徴と言えるだろう。

 さて、WebObjectsにおいてもっとも重要な位置を占めるのがフレームワークの提供である。石山氏によれば、このフレームワークについてアップルでは、NeXTの時代からすでに10年以上の取り組みがなされてきており、とりわけ安定性の高い“枯れた”技術を提供しているという。WebObjectsでは、OSサービスや数値、文字列など最も基礎的な要素となる「Foundation Framework」、HTMLテンプレートやセッションを管理する「WebObjects Framework(WOF)」、データベース/サービスからのデータ取得、ビジネスオブジェクトの管理を行なう「Enterprise Objects Framework(EOF)」の3つのフレームワークが提供されており、「いずれもアプリケーションで必要とされる、まさに“かゆいところに手が届く”骨格の数々を提供して、ユーザーのアプリケーション開発を飛躍的に向上させている」(石山氏)。

 また、WebObjectsでは開発を支援する強力なツール群が提供されている。これに関し、石山氏からは、コードやリソースの編集、あるいはビルド、実行、デバッグを実施するためのIDEとなる「Project Builder」、ユーザーインターフェイスの作成とそのロジックとの結合を行なうための「WebObjects Builder」、ビジネスデータ(Enterprise Objects)の作成と管理を行なう「EOModeler」の3つのツールの概要が紹介された。

 その後、セッションではWebObjectsを使った開発の実際のデモが行なわれた。デモの内容は、映画情報をタイトルやカテゴリから検索するアプリケーションの作成であった。具体的には、まずデータベースをオブジェクトにマッピングし、アプリケーションで処理するためのモデリングを行ない、検索条件をコーディングレスでオブジェクトに埋め込んで、検索結果とユーザーインターフェイスをドラッグ&ドロップで接続するといった、Webアプリケーション開発における典型的な手順が紹介された。デモを通してセッション参加者は、WebObjectsの使い勝手の簡便さと、スムーズな開発作業を十分に印象づけられたはずだ。また、ノートパソコン1台のみを用いたデモは、WebObjectsのパフォーマンスの高さを大いにアピールするものとなった。

 オブジェクト指向ベースの高い開発効率、そして豊富なフレームワークや充実したツール群、多様なデータベースを必要に応じて使いこなせる柔軟性の高さなど、WebObjectsを開発に利用することのメリットは大きい。とりわけ、次バージョンである5.0における100% Pure Java対応による、真のマルチプラットフォームへの対応は大いに期待されるところだ。


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