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最終更新日:2001-02-02
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JJJMP Vol.1 レポート
「Portable Jini Services」

木村氏 講師:木村哲郎氏(株式会社 東芝)
[資料(PDF: 465KB)]
 この日3つめとなった本セッションでは、東芝の研究開発センターでモバイルコンピューティングの研究に携わる木村氏によって、「モバイルの視点から捉えたJini」というテーマが取り上げられた。

 世はまさにモバイルコンピューティングの時代である。ノート型パソコンはさらに小型化し、パームトップコンピュータが登場するなど、コンピュータ機器はますます携帯性を高めるとともに、その性能の向上も急速に進んでいる。しかし、さらなる携帯性の追求は、どうしても操作性を犠牲にして成し遂げられている感があることも否めない。とはいえ、ネットワークを介した他の機器との連携を前提とするならば、ある程度操作性を犠牲にすることもやむを得ないというのが木村氏の考えだ。そして、これら携帯型コンピュータを各個人用のサービスを提供する“サーバ”と位置づけ、サーバも移動する時代になってきているという。つまり、電子メールやスケジュール、住所録、あるいはその他の文書やデータといったファイルを持ち歩くことによって、各個人が必要に応じてどこでもサービスを利用できるという環境が実現されている。こうした環境において重要なのは、モバイルコンピュータが接続先のネットワークに適応し、他の機器で提供されるサービスを見つけて利用できることである。その点で、Jiniのテクノロジーこそが有効なのだと木村氏は指摘する。

 ところが現状では、移動先のネットワーク環境においてJiniサービスを利用することには制限が付く。というのも、Java/Jiniでは、IPアドレスの動的な変更に対応できないのである。具体的には、Java VM初期化時に取得したIPアドレスは、OSで新しいIPアドレスが取得されても更新されず、Javaアプリケーションがjava.net.InetAddress.getLocalHost()メソッドで問い合わせた場合には、常に初期化時のIPアドレスが返されることになる。また同様に、機器がネットワークを移動したあとも、古いIPアドレスを含んだリモート参照をLookup Serverに登録してしまう。さらに移動前のアドレスを含んだコードベースがオブジェクトに付与されてしまうという問題もある。

 これらの問題に対し、木村氏は次のような解決策を提案する。まずIPアドレスの取得については、java.net.InetAddressクラス内のキャッシュを無効にするような改良を施す。そして、リモート参照については、新しいアドレス獲得後にすべてのlocalEndPointを更新するメソッドをsun.rmi.transport.tcp.TCPEndpointクラスに追加する。また、コードベースの問題については、新しいアドレス獲得後にローカルコードベースを更新するメソッドをsun.rmi.server.LoaderHandlerクラスに追加するといった具合である。このようなモバイル対応の拡張は、もちろんサーバが移動する場合は必要だが、そのほかにもクライアントが移動する、あるいは移動を伴わなくても、ネットワークを頻繁に接続/切断するPPP接続などにおいも、必要となるケースが考えられる。

 以上のようなJiniのモバイル対応の拡張について、木村氏はすでに簡単なJini Serviceでの動作確認を終えており、Jini Community Meetingにおいてプロジェクト立ち上げのアナウンスも行なった。今後は、さらなる問題点の洗い出しと、その対応策の検討を継続的に行なっていくということだ。こうした木村氏のような真摯な取り組みが各方面で活性化すれば、Jiniも実用化に向けて本格的に動き出すことになろう。


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