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最終更新日:2001-02-13
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「オブジェクト指向技術入門AtoZ」レポート
「UMLによるオブジェクト指向分析・設計入門」

重見氏 講師:重見剛氏(株式会社豆蔵)
[資料(PDF: 421KB)]
 一口にオブジェクト指向によるシステム分析・設計とは言っても、現在ではさまざまな方法論が提唱されている。まず重見氏は、Booch法、OMT法、OOSE法、Coad/Yordon法など、主要なオブジェクト指向方法論を簡単に概観することから解説を開始した。これら多様な方法論が存在することにより、対象分野や規模に応じた方法論の選択が可能である点は、開発者にとってはメリットであるといえる。一方、一般に方法論は開発プロセスと表記法から構成されるが、開発者は利用する方法論ごとにこうした開発プロセスや表記法を修得せねばならず、また各方法論の間でモデルをそのまま流用することができないので、必ず翻訳作業が伴うことが、問題点として浮上する。

 こうした状況下、登場してきたのが「UML(Unified Modeling Language:統一モデリング言語)」である。UMLは、複数の方法論の間におけるモデルの記述法を統一するもので、すでに挙げた主要な方法論の提唱者であるブーチ、ランボー、ヤコブソンを中心にまとめられた。内容的には、複数の方法論の利点を「いいとこ取り」したもので、1997年にはOMG(Object Management Group)によって標準のモデリング言語としての承認を得て、現在では業界のデファクトスタンダードとなっている。

 では、UMLを用いてモデリングを行なう意義はどのあたりにあるのか。この問いに対し、重見氏は次のように答える。まず、各工程で必要とされる一連のモデル(ダイアグラム)が用意されていること。そして、開発プロセスの詳細から表記法を分離できるので、開発者はひとつの表記法だけを覚えればよく、またプロセスが違っている場合にもモデルが理解できる。そして何よりも、業界標準であり、モデリング言語における世界共通語であるため、汎用性が高いこともUMLの大きな利点である。

 続いてセッションでは、要求を表すためのユースケース図、システムの構造を表すクラス図、オブジェクト図、パッケージ図、そして振る舞いを表す相互作用図(シーケンス図、コラボレーション図)、ステートチャート図、アクティビティ図、実装を表すコンポーネント図、配置図といった、UMLに用意されている具体的な各ダイアグラムの概要が紹介された。このように多様な図が用意されている理由について重見氏は「システム開発にはさまざまな人々が関与し、それぞれの視点からシステムを捉えている。そのために、関心事を議論したり、確認するための多彩な切り口を持ったモデルが不可欠」であると解説し、こうした切り口についての考え方として「4+1ビュー」を紹介した。

 以降重見氏からは、オブジェクト指向分析・設計において反復的に実施される各フェーズ、つまり、システム化要求のとりまとめを行なう要求分析、オブジェクトの導出と責務の割り当てを行なうシステム分析、そして実現方法をデザインするシステム設計の各局面において、UMLを用いたオブジェクト指向分析・設計が実際には、どのように実施されるのかが説明された。説明にあたっては、さきほど紹介されたUMLの各ダイアグラムが、具体例を通して解説されることとなった。加えて、UMLに用意されたステレオタイプ、タグ付き値、制約といった拡張メカニズムについても触れられた。

 最後に重見氏は、モデリングのポイントについて言及し、システム開発を行なうドメインについての用語辞書を必ず作成すべきこと、そしてモデルを作るのが目的ではなく、モデルによって何を表現したいのかを明確にすべきことを強調してセッションを締めくくった。


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