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最終更新日:2001-02-14
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「オブジェクト指向技術入門AtoZ」レポート
「パネルディスカッション
〜オブジェクト指向開発とはどんなもの?〜」

井上氏、重見氏萩本氏、酒匂氏
[資料(PDF: 435KB)]
司会: 小豆畑氏 この日のセミナー「オブジェクト指向技術入門AtoZ」の締めくくりとして、 本日の各セッションの講師陣と参加者によるフリーディスカッションが催された。その内容は、オブジェクト指向分析/設計から実装に至るまでの過程において、どのような点に留意すべきか、あるいは開発環境をどう扱うべきか、そしてオブジェクト指向開発の修得はどうすればよいか、などのテーマについて論じられるものとなった。

 まずはじめに、オブジェクト指向開発における留意点として「オブジェクト指向の落とし穴にはまらないためには?」どうすべきかということについて、本日の3人の講師の方々から意見が述べられた。これについては三者三様の言い方ではあったが、その意図するところはほぼ同様であったといえる。すなわち、オブジェクト指向開発における分析、設計、実装といった各視点を開発者はきっちりと自覚的にとらえ、各視点を混同することなく、その視点に応じてモデル化等の作業を行なうべきであるということである。また、ユーザーと開発者の間の視点のズレを修正するための手段としてのユースケースといった手法の有効性についても言及された。

 続いてオブジェクト指向における再利用に関する意見が交換された。まず井上氏は「オブジェクト指向=再利用という図式があるが、これは決して自然に達成されるものではなく、どこまで、なにを再利用したいかを必ず意識していないとできない」と述べた。重見氏は、こうした視点を持つことに加えて、クラスやコンポーネントの運用の側面から、「使い方などを公開することが大事」であると付け加え、萩本氏はさらに両氏の主張を推し進めるかたちで「アプリケーションの開発の視点がシステムの境界を定めることにあるのに対し、再利用の視点はオブジェクトの境界を定めることにあり、両者の視点には大きな差異がある。つまり、オブジェクト指向開発を行なう者には双方の視点が要求される」ことを強調した。さらに、ここでの議論は、単にソフトウェアコンポーネントの再利用ばかりではなく、設計技術、知識の再利用といったものにも敷衍されていった。

酒匂氏  次にオブジェクト指向開発においてとりわけ重要となる開発プロセスの進め方について、重見氏からはUP(Unified Process)が、井上氏からXP(eXtreme Programming)が、萩本氏からDropが、それぞれ紹介された。また、この議論からは『オブジェクト指向入門』(バートランド・マイヤー著)の訳者としても知られる酒匂寛氏が飛び入り参加し、開発プロセスについての氏の意見が披瀝された。

 続いて展開された開発環境に関しての議論では、開発ツールに対する過剰な依存についての警告が中心に語られることとなった。これに関連して井上氏からは、あるサイトにおいて開発ツールが一般化したために、エンジニアの質が低下するという結果を招いてしまった例などが報告された。さらに萩本氏からは、開発ツールのみならずオブジェクト指向開発の発展によるソフトウェア開発自体の本質の空洞化についての危惧も語られることとなった。また、オブジェクト指向の学習については、独学で行なうのではなく、積極的にコミュニティを利用していくことの重要性が語られた。

 残念ながら時間の制限から、あらかじめ用意されたテーマのすべてを消化することはできなかったが、以上の議論には本日の講師陣を中心としたパネリストだけではく、セミナー受講者からの意見も活発に寄せられた。例えば、学生の受講者からは「Javaを修得したら、この先何年食っていけるか?」といった質問が飛び出すなど、ともすれば難解な議論となりがちなオブジェクト指向が、非常にざっくばらんに話し合われたことは、各参加者にとって大きな収穫となったことであろう。


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