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最終更新日:2001-06-19

「SOAPって?」レポート
「パネルディスカッション」
〜SOAPの可能性と、HORB Openの取り組み〜

パネルの写真
 最後に本セミナーのまとめとして、今後のオブジェクト指向技術について、SOAP、HORBの視点から、パネルディスカッションが開催された。パネリストは、本セミナーの講師陣であるマイクロソフト(株)の萩原氏、野村氏、(株)豆蔵の萩本氏の三氏に、マイクロソフト(株)の熊谷氏、HORB OpenでHORB EXTENTION SOAPプロジェクトを推進している篠原氏、片山氏を加え、進行はHORBOpen BOF担当の(株)日立超LSIシステムズの小豆畑(レポータ)が務めた。

 まず最初にパネリストの方々より、簡単に自己紹介がなされた。自己紹介であるにもかかわらず、「マイクロソフト.NETは、どこまで本気なのかな?」という篠原氏の本音を聞きたい発言に対し、熊谷氏が「SAOP-Java/CORBA相互接続の検証を行っています」とだけ答え、はぐらかす場面もあったり、萩原氏より、「オブジェクト技術は必ずしも万能ではない。SOAPはXMLスキーマが根底にあり、これは、オブジェトに類似しているが、データモデルが異なるためSOAPの実装を行う上でXMLスキーマはオブジェクト技術とは異なる点を留意することが重要」といったSOAPに関してよりつっこんだ意見もなされ、熱いディスカッションが予見されるスタートとなった。

熊谷氏  片山氏

 続いて、”HORBOpenとしてのSOAPへの取り組み”というテーマでディスカッションが行われた。本テーマに関して、萩本氏からHORBOpenとして、HORB EXTENTION SOAPプロジェクトを発足させた背景について説明がなされた。現在、HORBはHTTPトンネリング技術を持つが、今後の機能拡張の点で、SOAPに着目し、ドキュメントレベルでの調査を開始したということである。同プロジェクトの展開として次の2点について計画中であると述べた。

  1. HTTPトンネリングをSOAPで実装
  2. メッセージ通信をSAOPで実装し、他の製品とのメッセージ交換を実現

 ディスカッションは上記の萩本氏の話題を中心に展開された。SOAPの特徴やXMLスキーマをタイプシステムとしていることの特質等がディスカッションされ、前半のセミナーでは十分に消化できていなかったSOAPの局面として以下の4点がが浮き彫りとなった。

  1. SOAPは軽量でシンプルを前提にしているのでCORBAサービスはない。たとえば、トランザクションサービスなどは別のテクノロジーで実現する必要がある。しかし、HTTPに変わるサービスは実現可能。
  2. XML利用は次のような利点/欠点の側面を持つ。
  • 多岐なデータ記述力、拡張性は利点
  • XML記述形式(タグで記述)はメッセージサイズを増大させる
  • 複雑なデータ構造のやりとりを考えるとシリアライズ/リシリアライズの実装は結構、大変。
  1. SOAPではオブジェクト参照は値を渡しているので、オブジェクトリファレンスを参照する仕組みはない。
  2. SOAPはORBの枠組としてリモートオブジェクトの状態管理はクライアントではできない。すなわち、クラントの要求の終わりをサーバへ通報する仕組みがない
  • HTTP1.0は、接続が切れたことがクラントからのサービス終了を意味
  • .NETとしては、サービスの時間貸しモデル(リース)によりサービスの完了を示すWEBサービスを提供しているが、これはビジネスモデルに依存した技術であり、本質的な解決ではない
  • HORBでは、オブジェクトの生成モデルと接続モデルの使い分けで対応

平野氏  次に、会場の聴講者も交えて、SOAPの今後の展開に関して、マルチプラットホーム/マルチベンダーを進める視点、組込み系への対応に関する視点で以下の質疑が行われた。

Q: SOAPはマルチベンダー、マルチプラットホームを接続する技術として着目している。HTTPバインディングを如何に実現するか?
 その方法として
 1) SOAPソースの開示
 2) 接続テストを繰り返す
等あるが、どういう対応を考えているか?

A: ソース開示については、ツールキットレベルでは開示を検討(旧バージョンでは実施済み)。協議会のような場を設けて、接続試験するのが現実解(これに対しては、ちょっとシビアなコメントがなされ、仕様さえ開示すればうまくいく?という過去に取り組みを踏まえた貴重な意見交換がなされた)。

Q: SOAPは各ベンダーを接続するものとして、大きな効果あると思うが、現在注目を浴びている携帯電話を筆頭とする組込み系ではどのような展開を考えているか?

A: 機能面では、SAOPはシンプルであることを特徴としており、現状のミドルウエアDCOM、IIOP等をリプレースすることはなく、互いに補完し合うことを考えている。また、.NETのコンパクトフレームワークを準備している。しかし、XMLスキーマをタイプシステムとしたSOAPの実装は重たいので,組込み系では課題ありと考える。その軽量化の問題解決の一つとして、XMLスキーマのサブセットについて3WCで議論されているが、どこに切り口を持つかで、ベンダーのビジネスモデルが関与しており,まだ時間がかかりそうである。

 最後に、本ディスカッションのまとめとして、SOAPの今後の展開についてディスカッションがなされた。SOAPとしては、標準化の動きへの対応は重要であるが、あくまでSOAP自身はシンプルなものであり、単独ではビジネストランザクションへ対応はできないので、上位XMLとの連携を考える必要があるということ。また、XMLCに多くのリクアイアメントが掲載されているが、これが、すべてSOAPへ反映されるわけではないこと。本題であるHORBOpenとしてのSOAPへの取り組みは、ORBとしてのSOAPの動向に左右されない範囲での取り組みは継続していく予定であり、HORBプロトコルとしてSOAPをサポート可能としていくといったことが本パネルの結びとして述べられた。

 本ディスカッションは熱い議論のなか、SOAPに対するいくつかの方向性を探ることができる密度の濃いパネルを展開することができ、非常に有意義なものとなった。

(レポーター 株式会社日立超LSIシステムズ 小豆畑正一氏)


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