「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

③親子のルール作り部門

silver優秀 「主人公」  大分県 夢眠(ムーミン)


3人の息子達よ。3人ともスマートフォンを持っているが、私は携帯電話のままだ。ありとあらゆることが出来てしまうスマートフォンに対して、最初は羨ましい気持ちもあった。でもね、最近、電車に乗って出かける時、目の前の若者がずらりとスマートフォンの画面に釘付けになっていたんだ。みんな「まじめに」に画面を見ている。そのため周囲に無関心になっていたよ。君たちもあの同じ顔になっていないだろうか?

私が、夜行列車で旅行する時は、同席になった人と友達になるのは、当たり前のことだった。たかが通学列車でも、隣に座る人が憧れの人で、何か言葉を交わすことが出来た日は、その日一日は何となく得をしたような気がしたものだ。窓の外を眺めて、季節の移ろいを感じ、友人と旅行へ出かけて新しい発見をしたりしていた。 食事時間は家族がその日あったことを、おもしろおかしく話したり、失敗で落ち込んでいる時は、慰めたりしあっていたよ。そんな「一家団欒」があったんだよ。最近の君たちを見るとあまりの便利さに、自分自身を失ってはいないか心配になるよ。食事は指一本で火がつくし、レンジもあり、風呂も蛇口を回せば熱湯が出る。

長男のJ君
今の君の日本語力と剣道4段という力があれば、中国で「剣道が出来る日本語教師」として行けたのに、君は反中国のプロパガンダ映像やネットの統計を信じて、結局行かなかったね。私は多くの中国人や韓国人でfacebookの友達がいるし、現地にも何回か足を運んだから確信して言える。「民族による習慣の違いはある。しかし、違いよりも同じ感覚の部分が多いんだ」と。一人一人は君が思ってるよりも、遙かに友好的だよ。しかし、君は私の耳を貸さず、単純に「嫌いだ」ということで行かなかったね。今、毎日意に沿わない仕事をして。疲れたと言いながら帰って来るのを見るのが不憫だ。 ネットに寄りかかるのでなく、自分の足で確かめ、自分の目で見ることがいかに大切か知ってほしいよ。

三男のY君。君はまだ学生だけれど、母さんが行ったとき、GPS機能を使い、うまく大阪の町を案内したそうだね。母さんは驚いていたよ。でもね、友達が少ないことを心配していたよ。君は子供の頃は周りから「うるさい」と言われるほど、よくしゃべる子供だったね。でも私達がそれを咎め過ぎたからかな。今はすっかり大人しくなってしまったね。でもね、私が二つ感心していることがあるんだ。出不精の君だが、帰省している時、私が大分のFablaboに行こうと誘うと、いつもついて来てくれるね。君が高校生の頃、東日本大震災が起こり、そのすぐあとに、君が涙目になりツイッターを見せてくれた。それには、"Pray for Japan"のタイトルのもと、世界各国から次々に応援メールが、入ってきていたね。それがSNSを始めるきっかけなったんだ。そして、韓国のセウォル号の事件が起きたときも励ましの言葉を知り合いの韓国の人に送ったんだ。しかし、何もないときに、人に尋ねたり、自分で考えたりして動くことは忘れないでほしいと思うよ。

次男のT君、君は3人の中でも、リーダー的存在で、パソコンも一番うまいね。お父さんのパソコンも君が何度か修理してくれた。君は。体の不自由な人達の面倒を見る仕事についているので、無駄なことには使っていないと信じる。

3人とももう成人している上に、パソコンの扱いについては君達の方が遙かに上だ。また、私達も君達の年代の時には、わざとでも親に反抗したり、心配をかけたりということがあった。いくつか提案したいこともあるが、今は君達を信じる以外にはない。

ただ一つだけ言わせてくれ。インターネットで知ったことでも、自分が行動することによってそれを裏付けてほしい。インターネットに沿って動くということは、自分自身が動くのではなくインターネットに動かされていることになるからだ。知識の量が増えたことを頭が良くなったと信じる人がいる。もしそうだとしたら、過去の偉人は君達より頭が悪いことになる。その人達のすばらしいところは、その行動力にあると私は思う。 便利なことはいいことだが、それはあくまでツールとして扱ってほしい。

繰り返しになるが、私が3人に言いたいこと、それはバーチャルの世界だけでなく、自分の体で感じてほしいということだ。自分の体で感じ、行動することが、これから君たちが生きていく上で主人公となって生きることだと思うよ。私が言うのは、ドラマの主人公のようなことではない。たとえ、脇役でもいい。自分が納得してその場にいるということだ。自分が主人公でないときは、ノルマをこなしたり、マニュアルばかり頼って本当の「生きていることのすばらしさ」を見いだせずにいる。今、1秒間に24時間分の情報がインターネットに次々に増えていると聞いた。押し寄せる情報の波を、自分のものとして、これからの人生を充実させてくれ。私も何とか追いつけるように努力するよ。


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