「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

②トラブル克服部門

gold最優秀 「プチネット依存克服 ~デジタル断食の旅から見えたもの~」  滋賀県 竹内義博


私は一日の大半パソコンやインターネットを使って仕事をしています。 長時間利用の事を依存と言うならネット依存の状態でしょうが、健康面も含めて日常生活には支障は無く、今まではあまり意識した事はありませんでした。 しかし、最近頻繁にSNSのコメントなどに反応して仕事を中断したり、仕事を終えてからもSNSやチャットで時間を忘れて就寝時間が遅くなったりしています。 また、学生の頃(30年ほど前)から今でも、気ままな一人旅が好きで暇を見つけて出かけていますが、これも最近はネットの情報やスマホに頼ってしまっています。 そんなことで、これはネット依存への入り口ではないかと感じるようになりました。 軽度のネット依存の対処方は一時的にネットから離れてみることですが、日常生活では仕事も絡んでいるのでそれは容易ではありません。

そこで今回、ネットもスマホも無かった学生の頃のスタイルで旅に出る事にしました。 ネットによる事前調査もしないで、スマートフォンなどのネット接続機器をはじめ、デジタルカメラなどデジタル機器のたぐいはすべて家に置いて、持ち物は身の回りの物と、本の時刻表、メモ帳、カメラは使い切りのフィルムカメラのみと言う、いわゆる"デジタル断食(デジタルデトックス)"の旅です。 出発の前日、旅の趣旨を家族に話すと、万が一のためにスマホだけは電源を切って持って行くようにと、今年高校を卒業した娘に言われました。 でも公衆電話があるので大丈夫だし、何の心配もないと思って、SNSにも投稿し、パソコンとスマートフォンの電源を切って、いつもより早めに床に就きました。 普段はすごく寝付きがいいのですが、この日は帰るまで確認出来ないSNSの事が何故か異様に気なり、なかなか寝付けませんでした。 まさか自分がこんな状態になろうとは予想していなかっただけにショックではありましたが、これが繋がり依存と言う物かと、SNSにハマって夜寝られない人の気持がわかった気がしました。

そして朝も早めに目が覚めてしまい、起きるやいなや無意識にスマホに手が延びてしまいたが、思い留まり電源を入れることなく持たずに出発しました。 電車に乗ると、普段ならスマホの乗換アプリを使うところ、この日は本の時刻表と格闘し、ノートにメモを取りながら行き先を考えましたが、気が付くと無意識に、普段スマホを入れている胸ポケットを触っていたり、他の人の着信音やバイブ音に反応していたりと普段、絶えずスマホを意識している事に気が付きました。
とりあえず1日目の行き先が決まり、ボーッと車窓を眺めていると新鮮な気持ちになってきました。これも今ではせっかく日常を離れて旅に出ているのに、スマホの画面ばかり眺めているのだと思うとなんかもったいない気がしてきました。

でも、まだ、時々胸ポケットに手がいき、少しですが不安感がありました。 最初の目的地に到着し、いつもなら観光スポットなどをスマホで適当に検索して行動するのですが、この日は昔ながら駅の観光案内所で相談すると、おそらくネット検索ではまず引っかからないであろう穴場を教えて頂き満喫し、ホテルも自分の足と目で良い雰囲気と所を見つける事が出来ました。

翌日は地元の人に教えてもらったお店での食事に大満足し、27枚しかない貴重なフィルムで慎重に写真を撮りながら、ローカル線の列車に乗ると、車内の主役は今も昔も高生でした。 昔は賑やかだった車内も、今はほとんどの子がヘッドフォンをしてスマホ画面を眺めていて静かで、スマホに夢中だった女子高生がもう少しで降りそびれるという一幕もありました。

帰路に着く頃にはスマホやネットのなかった時代の記憶が蘇ったのか、スマホを気にする事もなくなり、学生の頃にタイムスリップして感じでした。

帰宅して、パソコンとスマホの電源を入れると仕事関係のメールが山のように届いていて現実にもどり、その必要性と利便性から永久に電源を切る訳にはいきませんが、その後は無意識にSNSへの書き込みや、スマホを眺める回数も減り仕事の効率が上がった気がします。

しかし、生まれた時からネットやスマホが空気の様な存在になっている今の子ども達なら、どのような感想を抱くのかなあ?と思いました。 最初、娘が私に忠告した様に、たとえ電源を切った状態のスマホでも、それを持たずに旅に出る事は考えられなくて、怖くて出来ないのかもしれません。 ただ、私がローカル線の車内で目の当たりにした光景から察すると、大半の子どもたちがネット依存の入り口か、それよりもっと奥に入っている気がします。 そこで、たとえ1日でも電源を入れない日を作れば、何か新鮮な発見があるのではないかとも思いました。 そしてインターネットの世界は広いと言われていますが、私の旅の原点である、知らない土地、人にふれ、見聞を深めるという観点からすると、人生も同じで、スマホの世界は狭く30年前の自分の方が世界は広かったのでは?と再認識し、プチネット依存を克服できた旅でした。


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