「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

②トラブル克服部門

silver2特別 軌道修正  岩手県 匿名

『あなたは悲劇のヒロインになりたいのね』

中学の担任にそう書かれた時から、私は母からの虐待を訴えるのをやめた。"優等生の親は常識人のはず"そう決めつけられたのだ。教師に絶望した私は『いい子』のまま卒業した。しかし、大人になっても母の支配は続き、ある時、限界がきた。顔面の痙攣に加え、うつ病の症状も始まったのだ。

慌てて対処法をインターネットで検索した。『顔面 痙攣』『母親 支配』『母 逃げたい』

助けを求めるように何度もワードを打ち込み検索した。すると、私が長年探し求めてきたものが、全て出てきた。まるで画面の向こうでずっと待っていたかのように。『毒親』『機能不全家族』『アダルトチルドレン』それに関する本も沢山出版されていて、同じ状況の人の体験談もどんどん出てきた。

「知らなかった…」

ずっと孤独で悩んできたのに、世の中にはこんなにもたくさん同じ苦しみを味わってきた人がいたなんて…。 そこから専門機関を探すのに時間はかからなかった。心理カウンセラー、精神保健センター、心療内科。未知の世界で気軽に行ける所ではない。しかし、インターネットには『口コミ』というものがあり、どんな先生か、料金はいくらかなど、人に聞きにくいことも知ることができる。自分の身近なところに、こんなに相談機関があったんだと驚かずにはいられなかった。

しかし、窓口が見つかっても、私には仕事があり、子ども達の送迎もある。何よりも、夫に心配をかけたくなかったので内緒にしたかった。調べると、メールでカウンセリングをしてくれる所があるという。料金は、メール1往復6000円。直接話さずに伝わるのかという不安があったが、電話と違い時間制限がないため、何日もかけて長い文章を打つことができた。私は、初めて30年分の毒を吐ききった。カウンセリングの返信にはこんな言葉があった。『これまでの人生はリハーサル。これからが本番です』人生を歩むことに疲れた私の背中を、温かい手で押された気分だった。さらに調べると、母は人格障害者だったようだ。私は自身の生い立ちと今後の人生観が、一気に整理されていった。

インターネットで『糸口』を見つけることができなかったら、私はどうなっていただろう。市役所で相談するとか図書館で調べるとか、そんな時間も行動力も私にはない。

私が子どもの頃は、インターネットで何か調べるなんて気軽にできなかったけれど、今の子ども達は違う。誰にも言えない悩みを抱えた時、自分を救う手だてとしてインターネットを活用してほしい。私と同じように苦しんでいる子どもがいたら、一人でも笑顔を取り戻せますように。

結果発表ページに戻る


ホームページに戻る
Copyright (C) Internet Association Japan