「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

②トラブル克服部門

silver優秀 今を大切にしたい  神奈川県 ぷぅー

もしこの先うまくいかなくなったとしても、この人と、今、結婚すること自体を後悔することはなさそうかな。

そんな前向きなのか後ろ向きなのか、自分のことながらによくわからない理由ではあったが、出会って半年後には入籍し、有り難いことにそれから間もなく私たちのもとに長男がやってきた。仕事を辞めて迎えたマタニティライフ。お腹の子のことを考える幸せな時間…のはずだった。だが、お腹がどんどん大きくなるにつれ、お腹の子のこと「だけ」を考えすぎ、多くの情報に縛られる生活に変わってしまった。

その情報源の大半はインターネットによるものだ。自転車に乗ってはいけない、立ちっぱなしは厳禁、一日に二駅分は歩くべき、お腹の赤ちゃんが心配するから泣かないように悲しい映画は観ない、明らかに「?」と思うようなものや、健診で医師から大丈夫と言われているものも、ネット上で一度目にしてしまった情報はついつい気になってしまい、そちらを鵜呑みにしてしまう。
妊娠中の過ごし方、胎児に必要な栄養素、出産時の必需品など、多くの情報が手の中の機械ひとつで簡単に知り得て、実際に困ったときにとても役に立つのだが、毎日何かしら調べてばかりの生活は少しいきすぎだったように思う。自分自身の体の変化や、未だかつて経験したことのない出産という大仕事に対する不安を拭いさるように、私はスマホにとりつかれていた。それは、産後も変わらず、いや、むしろますます依存度は高まっていった。
赤ちゃんがずっと泣いているのは病気ではないか?頭の形がいびつに見えるのは大丈夫だろうか?月齢に見あった発達の基準は満たしているだろうか?息子の一挙一動に敏感になり、すぐにネットで調べては安堵することの繰り返し。何か問題が起きたわけではなくても、昼夜を問わず常に育児情報を調べてばかりいた。

そんなとき、夫がふと穏やかな口調でこう言った。「笑ってるね、かわいいね。もし今後、この子が何か困ったことに直面しても、二人で色々考えながら手助けしてあげようね。」
そう語る夫の手には赤ちゃんが、私の手にはスマホがあった。その瞬間、頭をがんと殴られたような衝撃を受けた。そうだ、私はなんのために情報を集めていたのだろう。調べれば調べるほど、どんどん派生してまた新たな不安を生み出す。そんな悪循環に時間を費やし、目の前の息子を飛び越えて、その先の見知らぬ世界にばかり目を向けていた。
何より大切なのは、今目の前にあるこの笑顔なのに。

それからは、必要以上に情報を求めるようなことはしないように意識して、代わりに、何か不安に思うことがあれば、まずは身近な存在に相談するよう心がけている。インターネットの情報がすべてではなく、あくまでも補助的なものとして捉え、「じゃあ、ちょっと調べてみよう」くらいが、インターネットとのちょうどいい関係だなと今は感じる。

度々「僕と結婚してよかったでしょ?」と、自信満々に聞いてくる夫に、「まあ、今のところ後悔はしてないかな」とは思うが、本当にこの結婚が正しかったかどうか、「じゃあ、ちょっと調べてみようかな」なんてね。

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