報道資料

平成11年4月30日
電子ネットワーク協議会

インターネットにおける次世代「レイティング/ フィルタリングシステム」の運用開始
=不適切な情報に対して、より実効性のある対応をするために=

 電子ネットワーク協議会(注)は、インターネット上の不適切な情報に対処するために、「フィルタリング機能の普及」を平成8年11月から推進している。さらに、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会と共に、PICS(付録1)準拠のフィルタリングシステムの開発を実施し、これに基づき平成9年9月からホームページ・レイティング(格付け)のデータベースシステム(PICS準拠ラベルビューロ)の運用を行ってきている。

 インターネット上の不適切な情報に対して、より実効性のある対応をするために、それらの開発・運用経験を生かして昨年から、次世代「レイティング/フィルタリングシステム」の開発を行ってきたが、このほど完成したので、その運用を5月1日から開始する。このシステムは、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会が、通商産業省からの出資を受けて情報処理振興事業協会が実施する「先進的情報システム開発実証事業」の一環として開発したものである。このシステムの特長は、以下の通り。

1.これまでの経緯

 インターネットは、オープンさと自由さとによって成功したネットワークであり、膨大な情報と全世界で数千万人にのぼる膨大な利用者とを包含し、現在も発展を続けている。しかし、情報発信が容易であり、発信情報が直ちに世界をかけめぐる特性を有しているため、非合法情報や有害情報(以下では、まとめて不適切な情報と呼ぶ)がネットワーク上を広く流通し、大きな社会問題となっている。

インタ−ネットを利用する際に、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的かつ主体的に情報を受信できるフィルタリング機能は、発信者の情報発信の自由を尊重しつつ、利用者の「知りたい」という権利と、「見たくない」または「(子供に)見せたくない」という利用者の意思を、それぞれ尊重することができる利用者主体の情報システムを実現する。

当協議会は、そのような社会問題を解決するために「フィルタリング機能の普及」を、平成8年11月から推進している。さらに、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会と共に、PICS準拠のフィルタリングシステムの開発を実施し、これに基づき平成9年9月からホームページ・レイティングのデータベースシステム(PICS準拠ラベルビューロ)の運用を行ってきた。

フィルタリングシステムの開発成果である、ラベルビューロのデータベース規模は2万URLを越え、パソコン搭載のフィルタリングソフトは既に2千以上の教育機関や企業等に利用されている状況にある。

しかしながら、データベース構築に当たっては、各ページ毎に目視によりラベル付加作業を実施しなければならないため、日々増加する不適切な情報に十分対処することが困難であった。また、フィルタリングソフトは使用するブラウザやOSのバージョンに依存するため、利用できるユーザ環境に制限があり、学校などのように、多数のパソコンを有する利用者からは、個々のパソコンにフィルタリングソフトをインストールし、設定する作業は煩わしいので解決して欲しいとの要望が出されていた。

これらを解決し、不適切な情報に対してより実効性のある対応をするために、昨年から、次世代レイティングシステムおよびフィルタリングシステムの開発を実施してきた。このシステムは、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会が、通商産業省からの出資を受けて情報処理振興事業協会が実施する「先進的情報システム開発実証事業」の一環として開発したものである。

2.次世代レイティングシステムの特長

 今回のシステムにおいては、インターネット上の各ホームページを、テキストのキーワード解析のみならず類似画像認識技術を用いて、効率的にレイティングしてラベルを付加する自動レイティングシステムを開発すると共に、他のラベルビューロとの間の連携、レイティング基準が異なるラベルの変換機能などを備えたPICS準拠のラベルビューロを開発することにより、日々更新される情報に迅速に対応し、不適切な情報に対するカバー率を拡大できるようにした。

ラベルビューロは、PICS準拠であるため、Internet ExplorerなどのPICS準拠のブラウザやPICS準拠の市販フィルタリングソフトから利用することができる。開発したレイティングシステムの主な特長は、以下の通りである。

(1) テキストのみならず画像も自動レイティング

(2) ラベルビューロ間の連携

全世界の膨大な数のホームページを、単一のラベルビューロで網羅することは不可能である。本ラベルビューロは、レイティング値の問い合わせがフィルタリングソフトから行われたとき、そのホームページのラベルデータが存在しない場合は、他のPICS準拠のラベルビューロに代行して問い合わせを行い、レイティング値を返すことができる。その際に、レイティング基準(どのような情報にどのような格付けを与えるかの基準)が異なるラベルビューロであれば、当協議会のレイティング基準にラベルを変換することができる。

なお、当協議会のレイティング基準としては、国際的に広く使われている米国の非営利団体RSAC(付録3)の基準(RSACi)をベースとするレイティング基準(SaftyOnlineと呼ぶ)を使用している。

(3) 高速・高信頼性の実現

ラベルビューロは、複数台のUNIXマシンにより構成されている。これらの間で負荷分散処理を行っているために、快適なレスポンスが得られる。また、1台のUNIXマシンが故障しても、他のUNIXマシンが代替処理を行うので、可用性が高くなっている。

3.次世代フィルタリングシステムの特長

 学校などからの要請に基づいて、サーバ型フィルタリングシステム(SFS)を開発することにより、学校のように多数のパソコンを有する利用者や、NetscapeなどのPICS未対応ブラウザ利用者におけるフィルタリング機能のインストールを容易にした。主な特長は、以下の通りである。

(1)プロキシーサーバによりフィルタリング

(2)プロファイルビューロを用意

SFSは、PICSルールズ対応であるので、先生や親などのアクセス管理者が、SFSにフィルタリング値やポリシーを記述したプロファイルを設定しなければならない。しかしながら記述が容易とは言い難いので、プロファイルの共有とインストールのための、プロファイルビューロを用意している。プロファイルビューロには、世代別、用途別のひな型プロファイルが用意されており、アクセス管理者がダウンロードして使用できるようになっている。

(3)利用者に合わせて、様々なレイティングの活用が可能

SFSでは、(1)学校の先生などのSFS管理者がレイティングしたもの、(2)第三者がレイティングしたもの(当協議会によるものなど)、(3)発信者が自らレイティングしたもの(例えば、米国のプレイボーイ社のページなどが実施しているもの)の3つが利用可能である。複数のレイティングが実施されている場合には、上記(1)、(2)、(3)の順で優先してフィルタリングを行う。

4.今後の予定

(1)ラベルビューロの充実とラベルビューロ構築への支援

開発したレイティング機能を用いて、わが国の不適切な情報を定期的にレイティングし、データベースを大規模化する。現在は3万URL程度であるが、今年の夏頃までに20万URLのラベルを登録する予定である。

レイティング作業は最終的には、一つの価値観に基づく基準の下で、人間の主観に頼ざるをえない。したがって、異なる価値観、異なる主観に基づく複数のラベルビューロが存在することが望まれる。今後、国内において、民間事業者など他のラベルビューロ構築の動きに対して、ソフトの提供など技術的な支援を行うことにより、異なる価値観に基づく複数のラベルビューロの運用サービスが実現されるように引き続き努める。

(2) 公開プロキシーサーバの設置と希望者にはソフト配布

NetscapeなどのPICS未対応のブラウザ利用者のために、SFSの公開サーバを設置する。(詳細は、ここをクリックして下さい。)

また、問題解決を迫られている教育関係者などへの普及促進の観点から、当協議会の事務局を務める財団法人ニューメディア開発協会からSFSやブラウザのプロキシー設定変更を阻止するためのツール(リダイレクタ)を配布する。但し、SFSの稼働環境がUNIXであり、コンピュータへの組み込みの際に技術的サポートが必要と考えられるため、当分の間、オンライン配布は行わずメールによる申し込みにより対応する。

(3) 複数のラベルビューロ間の連携と国際協力

インターネット上の情報量は膨大であるため、単一のラベルビューロで全世界の情報をレイティングすることは不可能である。今後、ラベルビューロにおいても、ドメインネームシステムと同様に国際的な分散システムを実現する必要がある。このため、海外ラベルビューロにも連携を呼びかけていく。

さらに、国際的に共通なレイティング基準の開発などを行う必要がある。既に、民間レベルではRSACの知的所有権を継承するICRA(付録4)において、特定の国の文化的価値から自由なコンテンツの客観的記述、異なる国のユーザが何が自分自身に適したものかを決める際に自身の価値観を適用することができるようなグローバルなレイティング基準の検討が始められようとしている。当協議会は、ICRAの創設メンバの一員として、わが国のみならずアジア圏におけるレイティング基準の確立に寄与していく予定である。

 

(注1)「電子ネットワーク協議会」

パソコンネット等の振興を目的に平成4年10月に発足した組織で、主要商用パソコンネットおよびインターネット事業者、コンピュータメーカ、通信ソフトハウス、アプリケーション事業者などの法人会員84社、学識経験者などの特別・個人会員14名、公共ネットワークなどに関心を有する協賛自治体51団体から構成されている。事務局は財団法人ニューメディア開発協会内にある。  

問い合わせ・連絡先 〒108-0073 東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル23F
                  (財)ニューメディア開発協会内
          電子ネットワーク協議会事務局
          担当 清水、国分
          Tel   03-3457-0671
          Fax  03-3451-9604


付録

1.PICS

 PICS(the Platform for Internet Content Selection の略称)は、ワールドワイドウェブ(WWW)の技術規約と標準ソフトを開発するために設立されたワールドワイドウェブ・コンソーシアム(W3Cと略す)が開発した技術標準の一つであり、インターネットにおけるコンテンツ問題を技術的に解決するために開発された。PICS、はフィルタリングサービスの基本モデルとレイティング結果であるラベルの形式とフィルタリングに関する通信プロトコルとを規定している。

PICS仕様はW3Cのホームページなどで公開されており、誰でも使うことが出来る。Internet Explorerなどのフィルタリングソフトには、PICS対応機能が備えられている。

 フィルタリングを実現するためには、そのようなソフトやレイティング基準(どのような情報にどのような格付けを与えるかの基準)の他に、発信者自身が情報に対してレイティングする(自主レイティング)か、流通している情報に第三者が付加的なレイティングを行う(サードパーティ・レイティング)ことによるレイティング・データベースが必要である。サードパーティ・レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数存在しても良い。

受信者のシステムはフィルタリングソフトに設定した値(フィルタリング値)とレイティング値を比較して、レイティング値がフィルタリング値よりも小さければ表示し、大きければ非表示にする。この仕組みでは、発信側で規制するのではなく、受信側で制御するところがポイントである。  なお、ラベルビューロとは、サードパーティ・レイティングのデータ要求に対して応答する、ネットワーク上の HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)サーバのことをいう。

2. PICSルールズ

  PICSルールズは、フィルタリング値とレイティング値を比較して、レイティング値がフィルタリング値よりも小さければ表示し、大きければ非表示にするという単純なフィルタリング機能からくる限界を解決する(例えば、ヌードであっても芸術作品ならば表示できるようにする)ために、既存のPICS標準に追加された標準である。

利用者の価値観や主観をフィルタリングに反映させることができるようにするため、フィルタリング値やポリシーを記述する言語をPICSルールズでは規定している。PICSルールズにより記述されたファイルは、プロファイルと呼ばれる。

3.RSACi

RSAC(Recreational Software Advisory Council、娯楽ソフト諮問協議会)は、公共、特に両親が電子メディアについて必要な決定をする際に、オープンで客観的なコンテンツ問い合わせシステムによる支援を行う、非営利団体である。  RSACi(RSACによるインターネット上のレイティング基準)は、スタンフォード大学で20年以上にわたり、メディアが子供に与える影響を研究してきたDonald F. Roberts 博士の研究成果に基づいている。暴力、ヌード、セックス、言葉のカテゴリがあり、インターネット上のコンテンツが、各々のカテゴリに関して0から4までのレイティング値で格付できるようになっている。

非営利団体によるレイティング基準であるので、米国では自主レイティングの際の実質的な標準になっており、国際的なレイティング基準作成においても、この基準に基づいて検討が進められてきた。

4.ICRA

今後、特定の国の文化的価値から自由なコンテンツの格付けの客観的記述、異なる国の利用者が何が自分自身に適したものかを決める際に自身の価値観を適用することができるような国際的なレイティング基準の実現が必要である。このために、RSACの知的所有権を継承するICRA(Internet Content Rating Association)が英国に設立されようとしている。そこでは、RSACの組織は発展的に解消され、RSAC関係者は米国におけるレイティング基準の普及発展を担当する予定である。

当協議会は、ICRAの創設メンバの一員として、わが国のみならずアジア圏におけるレイティング基準の確立に寄与していく予定である。

以上

 


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