報道資料
平成16年5月14日
財団法人インターネット協会

「モバイルフィルタリング技術の研究開発」の開始
−携帯電話における出会い系サイトなどへのアクセス制御や
不適切な情報のフィルタリングのために−

 近年、インターネットに接続できる携帯電話が子ども達のコミュニケーション手段として広く使われ、インターネット上の「出会い系サイト」を通じた児童買春等の犯罪が頻発しているため、法的規制のみならず、子どもが出会い系サイトへアクセスすることを制御するフィルタリングなどの技術的手段(付録1)の確立が望まれている。海外においても同様の問題が顕在化し始めており、英国では第3世代携帯電話のサービス開始に備えて本年1月に公表された業界ガイドラインにより、フィルタリングが本年中に携帯事業者から提供される予定となっている。

 財団法人インターネット協会(理事長:秋草 直之)は、そのような状況を踏まえて、総務省の平成16年度情報通信技術の研究開発に係わる公募において採択された「モバイルフィルタリング技術の研究開発」プロジェクトを開始し、携帯電話における出会い系サイトなどへのアクセス制御や子どもに不適切な情報のフィルタリングに関する技術開発を、携帯電話事業者、フィルタリングサービス提供者などの協力により推進する。また、それらを検討する場として、モバイルフィルタリング技術研究会(座長:斎藤信男 慶応義塾常任理事・環境情報学部教授)を新たに発足させることとする。

 上記プロジェクトにおいては、携帯電話におけるレイティング/フィルタリング方式(付録2)を支える基盤を取り決めるため、W3C(付録3)における次世代PICS(付録4)に関する国際レベルでの仕様策定に参画していく。また、携帯電話事業者の協力の下で出会い系サイトなどにおける有害性のあるコンテンツの識別を検討し、フィルタリングに役立てていくと共に、保護者の協力の下で子どもを対象に携帯電話のコンテンツフィルタリング(内容選択遮断)システムの実証実験を行う計画である。

 問い合わせ・連絡先:

  連絡フォームはここをクリックして下さい。

付録

1.インターネットにおけるフィルタリング

 インターネットにおけるフィルタリング(選択遮断)は、利用者(または親権者)が適切と考えるフィルタリングのレベルに合わせ、選択的かつ主体的に情報を受信でき、また、発信者の情報発信の自由を尊重しつつ、利用者の「知りたい」という権利と、「見たくない」または「(子供に)見せたくない」という利用者の意志を、それぞれ尊重することができる利用者主体の情報システムである。


2.レイティング/フィルタリング方式

 レイティング/フィルタリング方式とは、ウェブコンテンツに対して一定の客観的基準(レイティング基準)で格付け(レイティング)しておくことによって、情報受信者がそのレイティング結果を利用し、自らの価値判断に従ってフィルタリング(通過させたり遮断すること)を行う方式である。

 レイティングには、自主レイティングと第三者レイティングの2種類がある。自主レイティングとは、情報発信者が自らのコンテンツに対してレイティングを行うことであり、表現の自由の見地からはもっとも問題が少ない。第三者レイティングとは、情報発信者以外の第三者が当該コンテンツに対してレイティングを行う方式であり、レイティング結果を登録したレイティングデータベースを構築する。第三者レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数種類存在しても良い。

 そのような多様なレイティングデータベースからのレイティングデータを、フィルタリングソフトが受信者の設定に基づいて参照することによって、受信者が受信する情報、または両親や教師が監督下の子どもに与える情報をコントロールすることが可能となる。


3.World Wide Web Consortium (W3C)

 W3C は、ウェブの発展と相互運用を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、ウェブの可能性を最大限に引き出すべく設立された国際コンソーシアムであり、米国のマサチューセッツ工科大学計算機科学研究(MIT/LCS)、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び日本の慶應義塾大学が、ホスト機関として共同運営にあたっている。

 世界中の400を超える組織が同コンソーシアムの会員となっており、ウェブの発明者であるTim Berners-Lee氏が統括ディレクターを務めている。


4.PICS (Platform for Internet Content Selection)

 PICSは、W3Cがインターネットの社会的責任を技術的に解決するために、1995年から、規制なしでインターネットアクセスをコントロールするために開発を進めてきた技術標準である。PICSの特徴は、インターネットにおける情報発信を制限することなく、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的に情報を受信できるようにするところにある。


以上