「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

④青少年のインターネット利用部門

gold最優秀 「十年一昔のネット事情」  埼玉県 匿名


今年、私は教育実習に行きました。受け持った生徒は中学1年生。クラス40人全員が携帯電話を持っていて、うち6割がスマートフォン。私が中学生だった頃と、明らかに違うインターネット環境に、驚きを隠せませんでした。

私の頃はと言えば、ネット上に実名を出すなど言語道断でした。しかし今の生徒たちは、SNSにも実名を出していて、12歳の彼らの個人情報がインターネット上で容易に特定できる状態にありました。

実習の一環で、学級活動の時間を1時間、私のために頂いたのでこれしかないと思いました。子どもたちが見ている前で実際にある個人の情報を収集し、どんな人物か特定していったところ、子どもたちから悲鳴が聞こえました。名前の漢字、振り仮名、部活動、すべて、インターネット上で世界中の人がアクセスできる状態になっている情報だということを伝えると、最初は見覚えのある画面に喜んでいた子どもたちが、いつしか無言で私を見ていました。

「これは、名前や学校、家族構成を首からぶら下げて歩いているのと何も変わりません。実生活では絶対やらないのに、なぜかネット上だとみんなやってしまいがちです」「学校での楽しいやり取りの続きがネット上でできるのは本当に便利で楽しいことですが、悪意ある利用者見える環境でやることではありません」こう伝えると、子どもたちの中から「鍵アカウント」という言葉が聞こえてきました。今日、SNSには投稿の公開範囲を制限する機能がついている物もあり、それを使えばいいという声でした。

そこで、私対生徒たちでゲームが始まりました。私が特定できないような状況を作らせたのです。結果、本名で登録しない、公開範囲を制限する、この2つが最低限必要だということになりました。必要に応じて、投稿内容にも十分配慮が必要だと彼らは理解していました。

そのことをSNS利用のルールとしてクラス内で定めたところ、数日後子どもたちから意外なリアクションが返ってきました。面白そうなアカウントがあるが誰だか分からないため、学校内でのコミュニケーションが活性化したというのです。日頃学校内ではあまり関わりがない生徒同士のやり取りが起こり、学校もSNSもより楽しくなったと生徒は口を揃えて教えてくれました。

その後、道徳の授業で正しいインターネットの使い方について議論をしました。顔が見えないから何をやっても許されるわけではない、画面の向こうにいるのも人間だ、色々な考えが出ました。私は道徳の授業で特に何も言っていないのに、子どもたちが自ら導き出した考えを聞いて、私のほうが考えを改めさせられました。

中学生にインターネット、特にSNSは早すぎると考えていましたが、適切な利用法を指導すれば、彼らはそれを守って利用し、結果彼らの生活がより充実した物になると気づいたからです。私達の頃よりも情報機器の利用が盛んな彼らに対して、それを抑圧するようなルールを設けるのではなく、正しい方向に導いていくルールを作ることが、子どもたち含め社会全体の目指すべき姿だと感じました。

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