「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

①使いこなし部門

gold最優秀 「フェイスタイムに思いを」  茨城県 鈴村徳子


日本に住む75歳の妹は、末期の肺ガンに冒されていた。
妹の二人の働き盛りの子どもたち、兄弟は、母と一緒の時間を過ごす為に、時間を見つけては、ベッドのそばで時を過ごした。仲良し兄弟は、突然の思いもよらない病名に苦悩した。週末は、3歳の孫の登場を楽しみにしていた。長い間待ち望んでいた初孫だ。ガン治療のため、頭髪が抜けてしまった。でも、プレゼントされたカラフルな帽子を被った姿は、愛らしかった。
医師から残り少ない余命を告げられた。一層、家族で寄り添う時が貴重に思われようになった。そんな中、アメリカのフロリダに住む77歳の姉が気にかかる。姉は、年を経て、次第に日本を懐かしむようになっていた。帰国したのは、5年前だろうか。その姉も病気がちになり、長時間のフライトは困難になっていた。

ある日、次男がベッドの脇で取り出したのはiPadだった。これなら、海を越えて姉妹が会うことができる。ベッドの上からでもできる。アメリカに住む姉とのフェイスタイムだ。
次男は、アメリカ出張の際には、家族としばしばフェイスタイムをする。パパに会えると3歳の子どもは大喜びだ 。妻は、フェイスタイムの画面に映し出された店内の商品を見ながら、子ども洋服お土産を依頼する。遠く離れても、それぞれの場で、映像を映し出し、会話ができるフェイスタイム偉力の発揮だ。

早速、そのフェイスタイムの開始だ。海を越えて、瞬く間に繋がる。椅子に座る姉の姿が見える。思いの他、元気そうな姿に安堵する。
姉は、久しぶり妹に会うことができた。妹は、日本に来るたび、築地から新鮮な魚を購入し、得意の料理の腕で姉を歓迎した。いつもにこやかで、賑やかに語る妹の姿はない。姉の驚きは隠せない。ベッドに横たわる妹に、沢山、沢山語りかけた。きっと、姉の声は聞こえているに違いない。仲の良い姉妹だもの。

「Good bye」
それが姉の最期の言葉になった。お別れの言葉になった。
次男の気転、発想に脱帽だ。家族の思いのがあってのこそだ。そして、その思いのは、フェイスタイムで繋がった。

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(補足:私の長女の主人の母親姉妹のお話です)

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