「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

①使いこなし部門

gold最優秀 「ひとりではない」  神奈川県 奈緒


私は生まれつき筋ジストロフィーという病気だ。筋ジストロフィーは、筋肉の力が徐々に低下していき、歩行が困難になったり、手の力が弱くなったりして、できないことが増えていってしまう病気である。数千人から数万人に一人が発症するが、なかなか同じ病気の人に出逢うことはできない。

私は自分の病名を知らされたのが18歳のときだった。いまから18年前のことで、インターネットが普及し始めたころのことだ。36歳の今は車椅子を使いながら生活していて、外出には介助が必要だ。家にいながら世界と繋がることができるインターネットは私にとって欠かせない存在である。

私は子供のころから、自分と同じような状況の人に出逢うことができず、「孤独だ」と感じていた。20歳のころ、インターネットを使って、自分の病名を検索したら、自分よりも20歳ほど年上の筋ジストロフィーのAさんのホームページを見つけた。綴られた経験を読みながら、共感することばかりで、心が温まっていくのを感じた。Aさんとメールや掲示板で話すうちに、私自身も自分の経験を伝えてみようと考えるようになった。ホームページを立ち上げ、ブログに自分の病気のことや車椅子を使っての旅行のことなど、経験を綴った。すると、病気を抱える当事者・家族からのコメントや相談のメールが届くようになり、交流ツールとしてインターネットを活用するようになった。

海外の人たちとも繋がってみたいと思い、英語のページを作ったところ、インド、スリランカ、フィンランドなどの筋ジストロフィーの人たちからメールが届き、情報交換を行うことができた。交流した多くの人が、「孤独だ」と感じていたけれど、インターネットで繋がることができてよかったと話してくれた。外出が難しい私たちにとって、インターネットは自由に行動できる場所を与えてくれる。

2008年のこと。私は初めて筋ジストロフィーの女性と直接会う機会を得た。お互い、「孤独に感じている人たちがもっと繋がることができればよいのに…」という想いをもっていて、私たちは意気投合した。インターネットを使って筋疾患患者が交流できる場所をつくりたいと話しあい、女性の筋疾患患者のための会を立ち上げた。会費は無料で、インターネット上の会員専用の掲示板を使って交流するのが主な活動内容だ。気軽にお喋りできる場所をつくりたいということが、インターネットによって実現できた。ブログを通じて紹介することで会員は徐々に増え、今では180名をこえた。

患者会のメッセージは「あなたはひとりではありません」ということ。インターネットを通じて、いろいろな人と繋がることで、孤独が解消されたらよいと思う。これからも、インターネットを活用して、世界と繋がっていきたい。

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