seminar0812-2
電子ネットワーク協議会 平成8年度12月度月例セミナー概要
「パーソナルマルチメディアサービスBIGLOBEにおける3D音声チャットサービス」
講師:日本電気株式会社 BIGLOBEパーソナル
販売本部
主任 平林 扶佐子
1.NECのパーソナル通信サービスの方向性
情報化の潮流ということでは、インターネットの大ブーム、イントラネットの話題化、エレクトリックコマースの実用化の推進、マルチメディア技術の進展等があげられると思います。情報化の観点からも、いくつかの切り方がありますが、例えばステーション、ネットワーク、アプリケーション/コンテンツという切り方をした場合、それぞれにどういうことが要求されているかを考えてみます。
ステーションについては、やはり安い、特に家庭では簡単に手に入る位の安い価格が必要で、また誰でも使える使い易さが必要です。これに対して、パーソナルコンピュータも価格が下がってきており、PDAも実用生活の中で使えるものがかなり普及してきました。また、インターネットテレビもリモコンだけで、インターネットの情報が見られるものも、最近は出て来ています。
ネットワークについては、速く安くつながることが必要で、最近はかなり整備されてきました。インターネット業者は、ここ1年で急増しており、パソコン通信にインターネットの機能を付加することも、各パソコンネットで進めています。
アプリケーション/コンテンツについては、役に立つことが1つのポイントですが、楽しいことや分かり易いこと、あまりいわれていませんが美しいこと、内容も表現も美しいことが必要と思います。今Webサーバが急増しており、NECの企業情報発信サーバは一昨年(95年)立ち上げましたが、その頃に比べると何百倍といった数になっており、これだけの数になると量から質といった形で見るという選別化が進んでいます。それぞれの切り方で説明しましたが、こういったさまざまなシーズの進展が実用の場面でかなり融合が進んできて、さらに普及して拡大していくというのが現在の段階だと思います。
これに対してユーザニーズの方ですが、ワークスタイルとかライフスタイルが変化・多様化してきているので、それに合わせてニーズの方も多様化してきています。ホーム(生活、家庭)、パブリック(社会、公共)、ビジネス(企業、組織)のそれぞれの分野でさまざまなニーズが発生しており、ネットワークも従来は主に企業内や組織内で使われていることが多かったのですが、今は家庭で使うパーソナルユーザの方が相当ふえており、その方々のさまざまな生活シーンをサポートするトータルサービスのニーズが拡大しています。
そうしたさまざまなユーザニーズに対して、ネットワークサービス事業者として、それに答えようということで、7月24日にBIGLOBEを始めましたが、そのねらいとしては、パソコン通信サービスPC−VANとインターネットの接続サービスmeshを別々にやっていましたが、それを統合して1つのIDでパソコン通信とインターネットの両方を使えるようにしようということ、パソコン通信インターネットをシームレスに使えるようような環境を提供しようということ、さらにインターネット上のコンテンツサービスとしてサイバープラザというのをやっていましたが、それも統合して接続だけでなく、アプリケーションサービスそれからコンテンツサービスまで統合的に提供しようということです。
2.BIGLOBEの誕生
BIGLOBEという言葉は造語になっており、bigとNECの企業理念の1つである・mesh globalization”からglobeをとり、「大きなな地球のネットワーク」を意味し、地球全体を覆うような世界中の人々を相互に結ぶようなネットワークをやっていこうということです。BIGLOBEの特徴は、1つのIDでパソコン通信、インターネット、コンテンツのすべてのサービスが利用できることです。具体的には、エレクトリックコマース、スモールオフィス、ホームオフィス、ハイテク情報を配信するコンテンツサービスであるハイテクシャワー、3Dボイスチャット、全国各地の市町村にカメラを取り付けてそれをインターネットで遠隔操作することによりリアルタイムに各地の映像が見れるインターネット放送局等のサービスがあります。
BIGLOBEの1番目の特徴として、パソコン通信とインターネットとの融合があります。パソコン通信用のGUIソフトであったPC−VANナビゲータのジャンプ機能を拡張することによって、相互にインターネットとパソコン通信を行き来できるようになっています。BIGLOBEのパソコン通信の中の掲示板に載っているURLをマウスでクリックすると、自動的にブラウザが立ち上がり、その指定されたURLを表示します。逆にブラウザの方でPC−VANのところに、おもしろい情報があるよということで、リンクになっておりそこをクリックすると、ナビゲータが自動的に立ち上がり、ナビゲータの画面にその指定された画面が出るようになっています。
2番目の特徴として、コンテンツサービスをさまざまな形で提供しています。オンラインマガジンからすごく大きな同好会であるメガクラブまで、幅広いコンテンツとコミュニティを提供しています。具体例としては、グッズ紹介雑誌「Begin」のオンラインバージョン、「人生劇場」といって30代・40代のサラリーマン向けに、野坂昭如さん、弁護士の木村晋介さんといった方々が、ちょっと辛口のエッセーとか生活に約立つ法律関係の情報などを毎週書いているコーナーがあります。
3番目の特徴として、パーソナル向けのサービスということで、一人ひとりのニーズに合わせたエージェントサービスを提供しています。エージェントというのは、それぞれの人のニーズに合わせて自動的にさまざまな情報をとってきたり、いろんな処理をしてくれるものを指しています。その具体例として、MYPLAZAがあり、基本的にはWebのクリッピングサービスになっています。現在国内で一日当たり130の新しいWebがオープンしており、全部開いて見ることができないので、自分の興味あるWebをいかにセレクトしてくるかがポイントになります。MYPLAZAでは、あらかじめ興味あるジャンルやキーワードを登録しておくと、毎日オープンしたWebあるいは何か大きな更新があったWebに関して、登録しておいたジャンルとかキーワードに相当するものの情報だけを個人個人に届けるサービスです。これ以外にエージェントサービスとして、11月27日に読売新聞社と共同で、パーソナル向けの電子新聞というサービスを開始しました。これは、その方が興味を持っているジャンルとかキーワードに従って、毎日の「読売新聞」の記事のレイアウトを変えていくサービスです。
4番目の特徴として、マルチメディアによるリアルタイムサービスがあり、その例として3Dボイスチャットを紹介します。具体例として挙げていますライブスタジアムは、今年の夏に実験サービスとして、RCC中国放送にも協力いただき広島カープの全試合を、インターネット上でラジオ中継しました。ただラジオ中継だけでなく、ラジオ中継を聞きながらカープファンを含む野球ファンの方々に、3Dボイスチャットを使っておしゃべりしていただこうという企画で、最後まで楽しんでいただきました。
今まで主にBIGLOBEのサービスメニューについて説明しましたが、最後にサービス機構の特徴について紹介します。第1は高速・大容量で広がるネットワークということで、PPP接続アクセスポイントを今年中に100カ所へ拡大すること、東京大阪バックボーンを45Mbps化、海外リンク45Mbps化を行っています。第2はインターネットの場合はセキュリティが重要であるということで、多様なセキュアインターネットの提供、VPN(Virtual Private Network)サービスでの認証・暗号化の充実を行っています。第3は最先端のマルチメディア技術の提供ということで、3Dボイスチャット等のリアルタイムサーバの導入、各自治体に協力いただきインターネット放送局の全国展開を図っています。
3.3DボイスチャットOnLive!
3DボイスチャットのOnLive!は、アメリカのOnLive!Technologiesというベンチャービジネス会社が開発したチャットシステムで、現在では3地点以上20地点まで、同時に音声で会話することができます。全二重対応になっており、通常の電話で音声を話すような形で、自然に会話が楽しめます。参加者はアバターという自分の化身になる3Dのキャラクターとして、三次元会議室で会話することになります。
システム構成要素ですが、まずサーバのほうがOnLive! Community Serverという名前で、音声データとアバターや会議室データの交換を担当しています。SUNのSolarisとWindowsNTに対応しており、どちらでもサーバとして運用が可能です。同時アクセスユーザ数として、15、50、75というライセンスがあり、NECでは技術提携により4000ライセンスを取得しています。次に使用ブラウザのTravelerについてですが、OnLive!専用のクライアントソフトウェアなので無償で配布しています。マシン環境としては、現在は少々残念ですが、PentiumのマルチメディアパソコンでWindows95という条件になっています。インターネット接続については、14、4Kbps以上の接続環境があれば充分に使えます。
このシステムの最大の特徴は、インターネット上の音声によるチャットが、3人以上で電話のように会話できるということです。OnLive!、InternetPhone,Worlds
Chatの機能比較をしてみると、会話手段はWorlds Chatは文字で他は音声、同時会話人数はOnLive!が20人までInternet Phoneがわずか2人でWorlds Chatが3人以上多数です。また参加者がどう表現されるかということですが、OnLive!が三次元アバター、Worlds
Chatは二次元の平面的なアバター、Internet Phoneは視覚情報は特にありません。
2番目の特徴としてアバターがあり、参加者は三次元のアバターとして表示され、現在60種類のアバターを用意しており、お客様はその中から好きなものを選ぶことができます。3Dでのメリットは、笑った顔、怒った顔などの表情の変化をつけることができるので、会話にそれなりのニュアンスをつけることができます。アバターの位置関係により音量が変化し、近くの人の声は大きく遠くの人の声は小さく、また左の人の声は左から右の人の声は右から聞こえ、誰が話しているか区別しやすくなっています。
3番目の特徴として三次元会議室があり、トピックスごとに会議室を用意しております。例えばライブスタジアムの場合は、3Dで野球場をつくっており、その中でチャットしていただくようになっています。この野球中継しながらチャットするという実験の他に、もともと実生活でコミュニケーションがあるグループに限って会議室を使っていただいた場合に、どんな使い方があるかということで、レンタルチャットルームサービスを10月と11月の2カ月間実施しました。これで分かったことは、レンタルチャットルームのメンバーでも一般公開のライブスタジアムへ行ってみたい方もおられ、しかし初対面の方といきなり自分の声で話をするのは、結構勇気がいるもので、それに対して友達同士とかネットワーク上で知り合った同じ趣味仲間等、仲間同士で生の声で話せるのは楽しかったということでした。
それからもう1つの実験として、イベントに使ってみました。10月にデータショウが開催されましたが、このデータショウのリアルタイム実験中継というか、現地レポートをOnLive!で行いました。具体的にはレポータがデータショウの会場からOnLive!に入っており、ネットワーク上からお客様に同じ部屋に入ってもらい、例えば「地方なのでデータショウに行けないけれども、今年の目玉は何ですか」といった質問をしてもらって、レポータが説明するということをやり、これも好評でした。
【NEC芝浦のオフィスとつないでOnLive!のデモが行われる。アバターが現れ、そのアバター全体を変えたり部分を変えたりのアバターの操作が行われる。次に相手のアバターとの会話が行われる。】