seminar0901-2
電子ネットワーク協議会 平成9年1月度月例セミナー概要
「OCN(オープン コンピュータ ネットワーク)サービスについて」
講師:日本電信電話株式会社 NTTマルチメディア推進本部
マルチメディアネットワークサポートPT 担当課長 三石 隆夫
1.はじめに
OCN(オープン コンピュータ ネットワークサービス)として、96年12月25日から開始しているサービスの内容を、利用事例等を踏まえて紹介します。本日の説明の内容はOCNの概要、現在ある基本機能サービス、今後出て来る高機能サービス、公正競争確保等の全般説明をします。利用事例としては、先行導入エリアである藤沢、大垣の状況を踏まえて各サービスメニュー毎に利用方法を説明します。
通信を取り巻く情勢として、アメリカのゴア副大統領のNII構想、パソコン通信やLAN間通信の急成長、世界的規模でのインターネット利用の爆発的増加等、マルチメディアの使い勝手が非常によくなってきているのが現状です。
インターネットの利用事例として3つ上げました。1つは電子メールで、送信者AさんがBさんあてに電子メールを発信するときは、名前であるアカウントのアドレスを記入して発信するという形であり、そのパイプとなるインターネットは国内だけでなく海外への通信もできるようになっています。2つ目はWWW(ワールドワイドウェブ)を活用した、ホームページによる情報提供や検索があります。日経リサーチによる調査では、具体的な活用事例として、企業の組織紹介、商品やサービスの紹介、ニュースや情報の提供があります。3つ目はネットニュースがあります。従来パソコン通信等でネットニュース系のものがいろいろとあり、それの発展形としてインターネットでは、電子メールとネットニュースがあります。電子メールは1対1および1対Nのコミュニケーションが可能で、ネットニュースはN対Nのコミュニケーションが可能です。
情報メディア白書によると、パソコンLANの普及率は、ここ5年間で当初10%台だった導入率も36%を超える段階にきています。このパソコンLAN普及率から、パソコン1台1台がネットワークにつながれる時代きていると思われます。インターネットのユーザ数も急激に増えており、通信白書によると、96年7月の時点で1,300万台近くのパソコンがつながってネットワーク上で機能しているということです。しかし国別のホスト台数で見ると、日本はまだまだ上位先進国に比べると普及率が低い段階です。その中でインフラの整備を、NTTとしても協力していきたいと思います。
OCNの提供方針の1つとして、OCNサービスの提供があります。このサービスは、米国との「内外価格差」の実現つまり定額かつ安価な料金の実現を目指します。さらに公正な競争条件の担保の実現、他事業者の方々がバックボーン回線やアクセス回線を部分的に利用できるオープンなネットワークの実現を目指します。提供方針の2つ目として、企業通信向け高機能サービスの提供があります。
2.OCNサービス(基本機能サービス)
OCNの特徴は安価な国民的コンピュータ通信サービスの実現ということで、新聞の広告等でも「コンピュータ通信をみんなのものへOCN」という形で、親しみやすいインターネット通信を提供しますという形でアピールしています。第1は開放型のコンピュータ通信として、誰とでも、どこでもつなげていきたいというオープンな姿勢を取っています。第2は利用しやすい料金の提示、今まで専用線サービス等NTTの商品は非常に高いという声がありますので、それを解消した利用しやすい料金を提示しています。第3は全国に張りめぐらされている当社の多数のアクセスポイントを充分に利用した、広がりのあるネットワークを構築しようと考えています。第4は各種ネットワークとの接続ということで、国内および海外のインターネットサービスプロバイダーとの接続も既に実現しています。第5はネットワークとアクセス系の個別提供ということで、公正競争条件を担保するためにも、他の業者が利用しやすい形のメニューを用意しています。
OCNのいくつかの特徴を上げてみます。1つの特徴は水平分散型という特徴があります。アメーバー上でのネットワークの広がりをもった展開、多数のネットワークどうしの接続になります。もう1つはコネクションレス型という特徴があります。従来の電話では、発信者がダイアルして着信者を呼び出すと、応答が返ってきて通信が可能になる段階があり、その通信が可能になる段階で、パスとパスがエンド・エンドでつながれ、このリソースがすべて専有されることになります。それに比較して、コネクションレス型というのは、OCNの場合のIPルーティングで説明しますと、IPパケットに宛て先を付けて送りますとそのパケットは宛て先によってルーティングされますので、BのパケットはBに向かって、CのパケットはCに向かって着信することになります。その際、エンド・エンドのリソースはパケットごとの通信になり、リソースを確保しなくてすみ、ルーターと呼ばれる交換部分の機械が、あるリソースパスをシェアして使うことができるという特徴があります。また、ベストエフォート型という特徴もあります。従来の電話型や専用線サービス等は、品質・性能をギャランティ(保証)するため、非常に高価でした。品質・性能より低料金・安さを重視した通信サービスのニーズが生まれており、ベストエフォートすなわち最大限の努力をしますが、品質・性能面での保証はできていない部分があります。そこでギャランティのものはギャランティの利用方法で、ベストエフォートのものはベストエフォートの利用方法で使っていただくということで、お客様の多様なニーズにこたえるよう努めています。
OCNのサービスメニューとしては、大きく第1種と第2種があります。第1種サービスのことを常時接続と言っており、従来のインターネットサービスプロバイダーの専用線接続と呼ばれているメニューとほぼ同じです。その専用線の部分をOCN専用のアクセスラインを使い、常時つなげておくというサービスです。常時接続メニューには、128Kbpsのエコノミー、1.5Mbpsのスタンダード、6Mbpsのエンタープライズ、この3つのメニューを用意しています。96年12月25日にサービスを開始したのはエコノミーで、97年4月からスタンダードとエンタープライズのサービスを開始する予定です。第2種サービスはダイアルアップ接続で、電話網およびISDNを通じて、アクセスポイントにアクセスするものです。
今後のOCNの提供地域の展開計画ですが、96年12月25日から東京MAにアクセスポイントを設置して、ダイアルアクセスのサービスを提供しています。MAとは単位料金区域で、3分10円で電話が利用できる区域を示しています。97年度からは250MA程度にアクセスポイントを設置します。全国には567のMAがあり、250MAというと約半分のMAをサポートすることになり、そのMAのお客さまは3分10円の通信料でインターネットの利用が可能になります。98年度には、概ね全MAにアクセスポイントを設置する予定です。
OCNエコノミーサービスは、96年12月に藤沢、大垣が開始し、97年2月から3月にかけて札幌のほか11都市で開始する予定です。98年度には100都市程度をサービス提供エリアに、99年度は200都市に拡大する予定です。OCNスタンダード/エンタープライズに関しては、NTTが2年前から行っているマルチメディア共同利用実験ユーザの所在都市を中心に順次拡大の予定です。97年4月からは仙台、東京、三鷹を含めた15都市で開始する予定です。
実際にOCN上で提供されるサービスは、主に電子メールの蓄積、配送、およびWWWの活用、それからネットニュースの配送、講読、投稿、およびセカンダリーDSNいわゆるバックアップ用のドメインネームサーバです。インターネットプロトコルによる通信が可能であり、インターネットに接続しているので、外部へのメール等も自由にできます。このOCNのサービス内容は、ホームページを立ち上げていますので、ぜひご覧になってください。
3.OCNの企業通信向けサービス(高機能サービス)
現時点でのインターネットサービスは企業通信には向いていないのではないかという話をよくいわれますが、その対応としてOCNでは高機能サービスというものを考えています。現在検討中の高機能サービスの主なものに、暗号通信・鍵管理、マルチキャストルーティング、帯域確保の3つがあります。
暗号通信・鍵管理サービスですが、目的は暗号化による情報秘匿、情報の送受信者の認証・保証、情報の改竄防止にあります。利用するセキュリティの技術は、公開鍵管理方式と呼ばれるもので、送信者が相手の公開鍵で暗号化し、受信者は自分の秘密鍵で複号化します。鍵の管理を容易にすることで、多くの人と通信できるようにするのが公開鍵管理方式のメリットで、インターネットのような不特定多数の相手と通信をする可能性のあるものには、公開鍵管理方式が今後主流になると考えられています。一般的にはRSA等の方式論が提唱されていますが、当社が採用しようとしている技術は、当社独自の技術を利用したものを今ところ考えています。
マルチキャストルーティングのサービスですが、電子メールで1つのコンテンツを大勢の人に送ると、非常に時間がかかると共にサーバ側の負荷が大きくなり、サーバとネットワークをつなぐパイプも太いパイプを用意しなければいけません。それをルーターに同じコピーをつくってもらって、デリバリーする形にします。1つの情報を受けた段階で、そのルーターが2つに同じコピーをばらまき、さらにその先のルーターが受ければ、それぞれのエンドに向かってコピーを配信していくという形です。メリットは情報提供者の設備負担をへらすということと、1個1個送るよりもそれぞれのルーターがコピーをつくるという意味で、時間が速くなることです。<
ある程度スループットを確保してほしいというお客様に向けては、帯域確保サービスを考えています。帯域確保サービスの特徴は、通常のルーティングに用意したパスとは別の帯域確保通信用のパスをリソースとして用意しますので、相手先固定の最低帯域を確保した通信が可能になります。
4.公正競争条件確保に向けた取り組み
公正競争条件確保に向けた取り組みとしては、アクセスラインの提供とネットワーク接続の提供という形で考えています。対象としては、通信事業者1種および2種を対象とします。提供地域としては、OCNサービス提供エリアで実施します。もともとイコールフーティング(footing)の考え方で対応しており、当社が提供できるところは他の業者にも公平に利用していただけると考えています。サービスの具体的な提供イメージとしては、OCNのバックボーンやOCNのアクセスラインを他の業者が自由に使うようなイメージで対応したいと思います。
5.OCNの利用方法
第2種のダイアルアクセス接続は、電話・ISDNからのダイヤルアップにより全国で気軽にOCNを利用できるというのが、セールスポイントです。特にアクセスポイントの数が多いので、お客様にかかる電話料金の負担が非常に安くてすむというメリットがあります。個人レベルでのインターネットアクセス、自宅や出先からの会社等サーバへのリモートアクセス、それから大企業の支店・営業所、中小企業などでインターネット・イントラネットを一部の方から先行的に利用を開始するようなケースで利用できます。
第1種エコノミーサービス(128Kbps)は通信時間にかかわらずエコノミーな定額料金で常時利用できます。一般的な利用形態としては、中小規模事業所における電子メールを中心としたコンピュータネットワークの初歩的な利用、LAN内の通信が大半で外部との出入りの通信が少ない利用パターンのイントラネット、料金(通信料を含む)を気にせずに長時間したい個人のインターネットアクセス等があります。
さらにスタンダード/エンタープライズ(1.5Mbps、6Mbps)は定額料金で、より高速なサービスを常時利用できます。一般的な利用形態としては、事業所におけるイントラネット・インターネットの本格利用、社内WWWやファイル転送や企業情報システムなどへの本格的利用、高速なアクセス速度による各種サーバ・データベースからの情報の発信等があります。