第1回インターネットホットライン連絡協議会研究会レポート

 第1回研究会では、本来の目的である参加団体の最新ホットライン事情の情報交換と担当者の実務レベルアップを目指したいという願いから、協議会にご参加いただいている会員を対象としネットトラブル相談サイトご担当者、消費者相談窓口、プロバイダー、弁護士関係、警察関係など計27団体36名が出席され「研究会」を2001年11月27日(火)に開催いたしました。

ネットトラブルについては、内容が広範囲にわたるため「ある程度テーマを絞ったほうがよいのでは」との意見がありましたが、今回は第1回の研究会ということで、ネットトラブルの相談を数多く受けられている方にご登場いただきお話を伺うこととしました。 ご講演の後、参加団体の方と今後の活動内容についてデスカッションを行い、特に、相談窓口間の横の連携方法について、事務局より提案を行い、その提案について有益なご意見・ご要望を賜りました。頂いたご意見・ご要望のうち、直ぐに出来るものについて、早急に対応を図りたいと考えております。

本協議会に寄せられる期待が昨年の発足当初に比べ大きくなりつつあります。引き続きインターネットトラブルの解消を目指し、安全で利用しやすいインターネットの普及・発展を願い、活動して参りたいと考えております。ぜひ、会員のみなさまと共に、一歩ずつではありますが、貢献できれば幸いです。引き続きご協力とご指導の程よろしくお願いいたします。

第2回研究会で取り上げて欲しい内容がありましたら、事務局までご一報いだだけると助かります。(第2回開催時期:未定)。


日 時: 2001年11月27日(火) 13:30~17:00

会 場: 財団法人インターネット協会 新宿オフィス

プログラム

13:30-15:00 「インターネットトラブル最新事例」
13:30~14:30 ネット被害対策室 代表 中村 哲氏
14:30~15:00 東京都消費生活総合センター 相談員 柳川 淑子氏
15:00-15:30 「インターネットト消費者教育」
(財)消費者教育支援センター 研究員 中川 壮一氏
15:45-16:25 「インターネット技術」
(株)電通国際情報サービス eテクノロジー統括部
   主幹研究員 熊谷 誠治氏
16:25-16:50 「今後の活動方針について(ディスカッション)」


ダルク氏 「インターネットトラブル最新事例」
ネット被害対策室 代表 中村 哲氏



 トップバッターとして、ネットトラブル対策の有名サイトとしてご存知の方も多い、ネット被害対策室を運営されている中村 哲さんにご登場いただきました。
本サイトは、数多くのトラブル事例が豊富に掲載され、参考サイトとしても参考になります。相談件数の多いものとして、掲示板関連、オークション関連、アダルト関連、メール関連セキュリティ関連、出会いサイト関連について、ネット被害対策室に寄せられている相談の具体的な内容や最近の動向についてご紹介がありました。

 迷惑メールや掲示板などについては、NTTドコモの対策や最近の成立した「プロバイダー責任法案」(通称)などにより、かなり苦情が減るのではないかとのコメントがありました。 また、オークション関連の相談については、Yahoo!オークションがオークションガイドラインなどの対策を実施したことにより、相談件数がかなり減少したとご報告がありました。 最近での相談事例については、ブロードバンド関連、特に、Yahoo!BBについての相談が多くなっていることを指摘されていました。 最新の相談として、ウイルスの「Badtrans」、今や騒動となった「ワンギリコール」についてもいち早く紹介して頂きました。(ワンギリコールについては、この後の質疑応答でさらに話し合いました。)

 ネット被害対策室では相談を受付けているが、対応できない案件については他の相談窓口を紹介しているそうです。相談を回したときの対応が最も良いのが「警察」であるとのコメントがあり、各都道府県のハイテク犯罪相談窓口の対応は非常に良いとの評価です。しかしながら、地元の警察や交番等に、相談を持ち込んでも、冷たい対応をされるケースが多く、さらなる改善を要望されていました。次いで対応が良いのが「消費者センター」。そして、対応の改善を期待する窓口としては、「プロバイダー」をあげてられていました。
柳川氏 「インターネットトラブル最新事例」
東京都消費生活総合センター  相談員 柳川 淑子氏



 2番手として、東京都消費者生活総合センターでインターネット関連の実際の相談業務を担当されている柳川 淑子さんにご登場いただき、都に寄せられる相談事例についてご紹介いただきました。
 東京都消費生活総合センターでは、年間約3万件の消費者相談を受付けていて、そのうちインターネット関連は平成12年度「1,175件」、今年度は既に昨年の件数を超えており、「2,000件」に達しそうとの報告がありました。

相談内容が更に高度化・複雑化しており、これらに対応するため東京都では、相談員を相談分野別に分け、それぞれのグループが専門分野に特化して、相談内容の分析・情報収集・消費者啓発等をしているとのことです。インターネット担当は、相談担当職員1名と、柳川さんを含めた相談員2名の計3名で対応されているそうです。都の消費生活総合センターは、センターオブセンターズとして都内の市区町村に対する相談支援の役割を担っており、インターネットトラブルに関する情報についても、各市区町村の担当者に情報提供を行っているそうです。研究会では具体的な相談事例の詳細についてご紹介を頂きました。詳細についてはここでは割愛させていただきますが、非常に参考になり、日々の相談業務の大変さが伝わってきました。簡単ですが、相談内容の項目だけ掲載します。
  • ダイヤルQ2による高額支払請求
  • アメリカのスカイビズ社による無限連鎖講(ねずみ講)
  • ネットオークションで買った指輪トラブル
  • HPで知った海外ブランド品買付アルバイトの被害
個々の相談について日々、対応に苦慮されていることが多いでそうです。苦情相談の現状については、プロバイダーに対して、もう少し相談対応体制の充実をしてもらいたいとのコメントがあり、「消費者対応・保護という点では、まだまだ未成熟な業界であり法律の整備を含めた消費者対応を一層お願いしたい」との要望がありました。
中川氏 「インターネット消費者教育」
(財)消費者教育支援センター  研究員 中川 壮一氏



 ネットトラブルにあってからでは遅い、やはりトラブルの事前予防策についても考えることが必要ではないか、ということから、今回、消費者教育について積極的に取り組まれている、(財)消費者教育支援センター研究員の中川壮一さんにご登場いただきインターネットに関する消費者教育の現状についてご説明を頂きました。
 消費者教育支援センターは、内閣府(国民生活局)、文部科学省(生涯学習局)の共管の団体で、消費者教育に関する調査研究、研究会・研修会、シンポジウム等の開催 、指導者マニュアル及び教材の作成・配布など幅広く開催されいています。センターでは、学校の教師、児童生徒、行政職員、一般消費者に対して、教材の提供や消費者問題に関する講座を開催され、啓発・啓蒙活動をされているそうです。

今回も、いつくかの教育手法や教材のご紹介を頂きました。消費者の興味関心を喚起するための実践的な手法として、ロールプレイングゲームやWebコンテンツやCD-ROMによる教材についてご説明を頂きました。「トラブル内容はどんどん変化している。1つ1つのトラブルについて覚えていても対応は難しい。それよりも、どのようにすればトラブルに巻き込まれないようになるのか、実践力・応用力、考える力の育成が重要」であると中川さんからご説明がありました。

具体的な体験として、ブランド品のバックと財布の”本物”と”偽物”を持参され研究会参加メンバーに回覧し、「手にとって、確かめても本物か、偽物か区別が付かない。ましてやネットでは画面でしか見ることしかできず、手にとることもできないのでより一層の注意が必要」との説明に実感を覚えました。非常に参考なる教材が多く、今後の活躍が期待されます。
熊谷氏 「インターネット技術」
(株)電通国際情報サービス eテクノロジー統括部主幹研究員 熊谷 誠治氏



 利用者がよくネットトラブルにあってしまう仕組みについて技術の専門家から解説を頂きました。熊谷誠治さんは、インターネット協会のブロードバンド部会の部会長を務められています。著書に、「誰も教えてくれなかったインターネットのしくみ~中身を知れば、うまく使える~」(日経インターネットテクノロジーブックス)があります。

研究会では、インターネットの基本的構造、インターネット通信の仕組み(IPアドレス)、接続方法、アクセス方法について、分かり易いく、かつ、本質的なご説明を頂きました。「インターネットの構造は、基本的には電話と同じような接続網になっている。セキュリティも、電話なみのものしかない」との説明がありました。

具体的なトラブル事例の解説がありました。その中でも「アクセス元のIPアドレス」について「書き込んできたマシンのIPアドレスは特定できるはずである。動的にIPが変化していても、プロバイダー側にログが残っていれば、どの接続先からのものなのか追跡できる。きちんとしたプロバイダーであればログを保管している」との解説がありました。

また、個人情報については、「便利さと個人情報については、トレードオフ。Cookieを利用すれば利用者として便利なことがあるが、その人がどのようなサイトを訪れ、どのような購買をしたのか分かってしまう。集められた情報により新しいサービスとか製品がでることは消費者にとって有益だが、勝手に 集められた情報で各個人に向けてサービスをされた場合、それを「良い」と考えるのか「不快」と思うかは人によって違う。」との説明に納得しました。

最後にインターネットの危険性について「インターネットならではの犯罪はそれほど多くない。街で行っていることは、インターネットでも起こりうる。街で騙されている人はインターネットでも騙される。技術そのものの問題は少ない。犯罪の基本は現実社会とさほど変わらない」とコメントされました。確かにその通りです。
20011127.jpg「デスカッション」

事務局より今後の協議会の活動の方向性について提案を行い、研究会参加メンバーで討議を行いました。具体的な提案内容としては次のようなものです。
  • 会員間の何かあったときの”ホットライン”の設置について
    ちょっと困ったときに、相談できる相手を紹介してもらいたい、相談したい。
  • 参加団体のカテゴリ分類
    現在のWEBサイトで紹介している会員があまり明確に分類されておらず分かりにくいとのコメントがある。相談体制、内容別にカテゴリ分類したい。
  • 会員向けメールマガジン、メーリングリストの設置
    情報提供を行いたい。今回のような研究会の内容について周知したい。
特に、会員間の何かあったときの”ホットライン”の設置について、その趣旨についてご説明させていただき、貴重なご意見・ご要望を頂きました。事務局の案としては、「会員限定のホットライン電話帳のようなものを想定している。困ったときにどの電話帳を見て相談できるようにしたい」と提案させていただきましたが、複数のご意見がありました。

「何か新しい相談事例があったときに、どこに相談すればよいのか、ちょっと教えてくれるようなものが良い。つい最近、食品の成分について分析したい・・との相談がきたが全く分からず困った。たまたま消費者相談窓口の方を知っていたので相談したところ紹介を受けて助かった。個別に相談を受けるとその人に負荷がかかる。そこまで求めるのは難しい。」とのご意見がありました。本件については、会員限定のメーリングリスト等を設置し、困ったときにポストできるような仕組みを考えることで対応することとしました。会員からのポストに対して、一定期間経過し返答がない場合は、事務局側で出来る限りフォローしていく、ということになりました。

また、デスカッションの中では「警察に話を持ち込む場合の基準について明確化してもらえると助かる」とのコメントがありました。「各県警により、同じ相談内容でも取扱ってもらえる場合とそうでない場合がある。何らかの基準があれば、相談者の方に、どれを用意すれば良いのか答え易くなる」との指摘がありました。

最後に事務局より、今後の活動について会員のご協力を頂きたいとのお願いをさせて頂きました。
「今後は出来ることから少しづつ活動を行っていくが、今回と同様、各会員を訪問し、活動内容について会員間で情報共有できるようにしていきたい」との説明をさせていただきました。

お問い合わせ先:

 インターネットホットライン連絡協議会
 担当:太田、内山、大久保、山本

 (事務局)
 財団法人インターネット協会 三田連絡オフィス
 〒108-0073 東京都港区三田1-4-28三田国際ビル23F
 TEL:03-3452-6420(直通)03-3457-0672(代表)
 FAX:03-3451-9604
 E-mail: hotline@iajapan.org(事務局メール)
 E-mail: seminar@iajapan.org(研究会受付専用メール)

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