報道資料
平成15年7月7日
財団法人インターネット協会

携帯電話において不適切な情報のフィルタリングを実現する
デモンストレーションシステムの公開
−PICSに準拠した、出会い系サイトなどへのアクセス制御の実現−

 財団法人インターネット協会(理事長:秋草 直之)は、児童にとってのインターネット上の不適切な情報に対処するために、レイティング/フィルタリング方式(付録1)に基づき、ウェブ技術標準化団体World Wide Web Consortium(以下、W3C。付録2)が開発したPICS(付録3)に準拠したフィルタリングソフトSFS(付録4)やラベルビューロ(付録5)から成るフィルタリングシステムの普及を、平成8年から推進している。詳細は当協会のフィルタリング情報ページ(http://www.iajapan.org/rating/)を参照のこと。

 今回、携帯電話におけるフィルタリング機能のさきがけとして、インターネット上の不適切な情報をフィルタリングする「SFSブラウザ」と「モバイルSFS」から構成されるデモンストレーションシステムを開発したので、公開する。

 SFSブラウザは、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下、NTTドコモ)のインターネット接続サービスiモード上で動作するiアプリとして開発した。SFSブラウザがインターネットへのアクセスの中継として利用する「モバイルSFS」は、当協会のフィルタリングソフトSFSのエンジンを用いて開発されたフィルタリングサーバであり、PICSに準拠したフィルタリングのほか、コンテンツやURLに含まれるキーワードなどによるフィルタリングが可能である。フィルタリング基準は当協会のSafety Online2(付録6)を使用しており、モバイルSFSはSafety Online2に基づいて当協会が格付けを行った情報に従いフィルタリングを行う。

 (注)iモード、iアプリはNTTドコモの商標または登録商標です。

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 近年、我が国ではインターネットに接続できる携帯電話が若年層まで広がり、携帯電話やインターネットの「出会い系サイト」を通じた児童買春等の犯罪が頻発しており、また今般、国会において「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案」が可決され、青少年が出会い系サイトへアクセスすることを防ぐ手段の確立が要求されている。

 SFSブラウザとモバイルSFSは、携帯電話利用者(または親権者;以下、利用者)が必要とするフィルタリングのレベルに合わせ、選択的かつ主体的に情報を受信でき、また、発信者の情報発信の自由を尊重しつつ、利用者の「知りたい」という権利と、「見たくない」または「(子供に)見せたくない」という利用者の意志を、それぞれ尊重することができる利用者主体の情報システムを実現することができる。

 当協会では、デモンストレーションシステムを一般に広く公開することにより、携帯電話における不適切な情報に対するフィルタリング機能の啓発及び機能の向上に役立てたいと考えている。また、保護者や学校関係者などが管理する子ども向けの携帯電話において、実際に使用してもらう実証実験も検討している。更に、これらのフィルタリング技術を支える基盤となる仕様を取り決めるため、W3CのPICSに関する継続的な仕様策定に参画していく。

 SFSブラウザは、NTTドコモの503i、504i、505i、FOMAにおいて、以下のサイトよりダウンロードすることができる。
     http://rf.iajapan.org:8141/i/ib.html

 (注)SFSブラウザはデモンストレーション用の試験版であるため、実際の携帯電話コンテンツにおいては不適切なコンテンツであってもフィルタリングされないことがある。

 SFSブラウザの詳細については以下のサイトに掲載している。なおこの情報は、PCからのみ閲覧可能である。
     http://www.iajapan.org/rating/mobilefiltering/index.html

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付録

1.レイティング/フィルタリング方式

 レイティング/フィルタリング方式とは、ウェブコンテンツに対して一定の客観的基準(レイティング基準)で格付け(レイティング)しておくことによって、情報受信者がそのレイティング結果を利用し、自らの価値判断に従ってフィルタリング(通過させたり遮断すること)を行う方式である。
 レイティングには、セルフレイティングとサードパーティ・レイティングの2種類がある。セルフレイティングとは、情報発信者が自らのコンテンツに対してレイティングを行うことであり、表現の自由の見地からはもっとも問題が少ないと思われる。サードパーティ・レイティングとは、情報発信者以外の第三者が当該コンテンツに対してレイティングを行う方式であり、通常、レイティング結果を登録したレイティングデータベースを構築する。サードパーティ・レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数種類存在しても良い。そのような多様なレイティングデータベースからのレイティングデータを、フィルタリングソフトが受信者の設定に基づいて参照することによって、受信者が受信する情報、または両親や教師が監督下の青少年に与える情報をコントロールすることが可能となる。


2.World Wide Web Consortium(W3C)

 W3C は、ウェブの発展と相互運用性を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、ウェブの可能性を最大限に引き出すべく設立された国際産業コンソーシアムであり、米国のマサチューセッツ工科大学計算機科学研究(MIT/LCS)、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び日本の慶應義塾大学がホスト機関として共同運営にあたっている。400を超える組織が同コンソーシアムの会員となっており、ウェブの発明者であるTim Berners-Lee氏が統括ディレクターを務めている。


3.PICS(Platform for Internet Content Selection)

 PICSとは、W3Cがインターネットの社会的責任を技術的に解決するために、1995年から、規制なしでインターネットアクセスをコントロールするために開発を進めてきた技術基盤である。PICSの特徴は、インターネットにおける情報発信を制限することなく、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的に情報を受信できるようにするところにある。W3Cは、実現するためのフォーマット等に関する標準仕様を規定するのみで、レイティング基準やソフトウェアを提供する組織ではない。それらは、外部の活動に任せられている。例えば、マイクロソフト社のブラウザソフトウェアであるInternet Explorer 3.0以降には、PICS準拠のフィルタリング機能が組み込まれている。


4.SFS(Server-type Filtering System)

 当協会が提供するフィルタリングソフトウェアで、クライアント(ウェブブラウザ)とウェブサイトの間の中継サーバとして動作する。SFSを経由してインターネットに接続しようとするすべてのクライアント(ウェブブラウザ)からのウェブページ閲覧リクエストをフィルタリングすることができる。

5.ラベルビューロ

 当協会が提供するレイティングデータベースサーバのことで、ラベル情報(URLとレイティング情報をペアにした情報)を保持している。当協会のSFSはフィルタリングを行う際にこのラベルビューロを参照する。また、PICS準拠のフィルタリングソフトウェアはラベルビューロを参照することが可能である。


6.Safety Online2

 当協会が平成14年に制定したレイティング基準であり、ウェブサイトの有害度に応じて0から4までの5つのレベルに分類している。数値が大きくなるほど、より有害なコンテンツを含むウェブサイトであることを示している。具体的な内容については、以下のサイトに掲載している。
  http://www.nmda.or.jp/enc/rating/rating_standard.html

以上