報道資料
平成14年8月8日
財団法人インターネット協会

インターネット上の有害コンテンツに対する新レイティング基準の制定と
それに対応する新版フィルタリングシステムの提供開始
=よりコンパクトで使いやすいフィルタリングシステムを目指して=

 インターネット上の有害コンテンツに対処するために、レイティング/フィルタリング方式(付録1)に基づくPICS(付録2)準拠のフィルタリングソフトやラベルビューロ(付録3)から成るフィルタリングシステムの普及を、平成8年から推進している。詳細はここを参照のこと。
 今回、コンテンツに対するレイティング基準SafetyOnline(ヌード、セックス、暴力、言葉、その他の5つのカテゴリ毎に、0から4までの格付け値を付与する基準)を、両親などによる設定の容易さの観点から見直し、より簡略化した新基準SafetyOnline2(5つのカテゴリを統合して1つにし、0から4までの格付け値を付与する基準)を制定し、使用を開始する。
 それに合わせて、これまで提供してきたPICS準拠のサーバ型フィルタリングソフトをバージョンアップしたサーバ型フィルタリングソフトSFS3.01と、新たにラベルビューロソフト LB3.01のダウンロード配布を8月8日から開始する。それらのソフトは、技術開発を担当する財団法人ニューメディア開発協会が、経済産業省からの委託を受けて情報処理振興事業協会が実施した事業の一環として開発したものである。配布ソフトの特長は、以下の通りである。

(1)ラベルビューロソフトの配布による負荷分散
 ラベルビューロに対する負荷分散を図るため、利用者にラベルビューロソフトを新たに提供する。

(2)キーワードフィルタリング機能
 あらかじめ有害と判断する文字列を登録しておくことにより、ウェブページに含まれるメタデータ、検索エンジンに渡す文字列、あるいはURLに含まれる文字列によって、キーワードフィルタリングを行う機能を提供する。利用者によるキーワードの追加登録も可能である。

(3)SFS簡易設定機能
 管理者が、サーバ型フィルタリングソフトを容易に設定することができる簡易設定機能を提供する。

1.新レイティング基準SafetyOnline2の制定

 これまでのレイティング基準は、青少年向けを想定して国際対応の観点から米国の非営利団体RSAC(付録4)の項目とレイティング値(RSACi)をベースとし、ドラッグやギャンブルのような新しいカテゴリを追加して拡張することができるようにするために、「その他」のカテゴリを暫定的に加えたSafetyOnlineと呼ばれる基準(ヌード、セックス、暴力、言葉、その他の5つのカテゴリ毎に、0から4までの格付け値を付ける基準)である。SafetyOnline(またはRSACi)は、レイティングとフィルタリングを同じ基準で行える点が利用者の観点からは理解しやすく、Internet Explorer 3.0以降にサブセットであるRSACiが添付されているので普及させやすいと考えられたが、わが国では都道府県の青少年育成条例やパッケージメディア業界の自主基準などに見られるように、青少年に適切かどうかなどの複雑でない基準が一般的であるため、家庭での両親による設定を考慮すると、さらなる簡略化が望まれた。そこで、SafetyOnlineを、両親などによる設定の容易さの観点から見直すことにより、より簡略化した新基準SafetyOnline2(5つのカテゴリを統合して1つにし、0から4までの格付け値を付与する基準)を制定し、使用を開始する。
 サーバ型フィルタリングソフトSFS3.01では、このSafetyOnline2に基づいたフィルタリングレベル設定を行うことができる。同ソフトは従来基準のSafetyOnlineには対応していない。また本リリースに伴って、従来のSFS2.0は配布とサポートを9月から停止する。なお、Internet Explorer 3.0以降(6.0はバグのため未対応)のPICS準拠フィルタリング機能を利用する場合は、基準記述ファイルSafetyOnline2.ratをダウンロードして再組み込みする必要がある。

レベルSafetyOnline2 レイティング基準の内容
レベル4「性器の強調」人やそれを模したものの性器を強調した画像・映像。
「性行為」明らかに性行為とみなせる画像・映像。強姦などの性犯罪、嗜虐的・被虐的性行為の画像・映像。
「残虐」拷問や死体の切断、強姦などの残虐な場面や、切断された死体など残虐行為の画像・映像。
「誹謗中傷」特定の個人や団体に対する誹謗中傷や著しくわいせつな表現。
「反社会的」反社会的と思われる内容。
レベル3「全裸」人やそれを模したものの性器や陰毛が見えるような全裸写真、絵画、イラストなどの画像・映像。
「性行為らしき描写」明らかに性行為であるとみなせないが、性行為らしいと思われるあるいは性行為を連想させる画像・映像。
「殺人」人やそれを模したものに暴力が加えられ殺されるような場面の描写、あるいは流血や死体など、暴力の結果の画像・映像
「わいせつ表現」わいせつな表現。
「違法」違法性があるが、反社会性は持たないと思われる内容。
レベル2「部分的なヌード」性器は見えないが、臀部、胸部のように通常衣服で隠蔽されている身体の一部が露出されている画像・映像。
「着衣のままの性的接触」ペッティング等、着衣で性器の見えない状態で行われる異性間あるいは同性間の性的接触の画像・映像。
「殺傷」人やそれを模したものに対する傷害行為やそれを連想させるような画像・映像
「悪口」冒涜的な意図や俗悪な意図をもって使われる下品な言葉や悪口。
「公序良俗に反する」公序良俗に反すると思われるが、違法ではないと思われる内容。
レベル1「露出的な服装」性器や臀部、女性の胸部など身体の部分的露出はないが、身体の線が強調されていたり、乳房の3/4程度までが見えるような服装をしている人物の画像・映像。
「セクシャルなキス」舌が接触している、あるいは口が開いているようなキスの画像・映像。親愛の情を示すようなキスは含まない。
「争い」人や動物が争っている画像・映像。傷害や流血の描写は含まない。
「穏やかな悪口」比較的穏やかではあるが下品な言葉。性的機能に関する解剖学的言及のもとでの表現。
「要注意」子供(18歳未満)に見せるのに注意を要すると思われる内容。
レベル0レベル1以上の記述に相当するようなコンテンツを含まない。

2.新版フィルタリングシステムの提供開始

 (1)ラベルビューロの負荷分散、(2)キーワードフィルタリング、(3)SFS簡易設定を可能にするような、サーバ型フィルタリングソフトSFS3.01と、新たにラベルビューロソフト LB3.01のダウンロード配布を開始する。このシステムは、技術開発を担当する財団法人ニューメディア開発協会が、経済産業省からの委託を受けて情報処理振興事業協会が実施した事業の一環として開発したものである。

(1)ラベルビューロソフトの配布による負荷分散
 ラベルビューロには一日あたり4万から5万のアクセスがあり、また、教育の情報化の進展に伴い学校でのフィルタリングの利用拡大が見込まれることから、ラベルビューロの負荷分散が急務となっている。
 従来、当協会でのみ運用してきたラベルビューロに対する負荷分散を図るため、ダウンロードして利用可能なラベルビューロを開発した。自治体、学校等の大規模ユーザをはじめ、個人利用においても、このラベルビューロをダウンロードしてローカルネット(もしくは個人のマシン)に構築することにより、サーバ型フィルタリングシステムやPICS準拠のフィルタリングソフトからのアクセスについてのレスポンス向上を図ることができる。

(2)キーワードフィルタリング機能
 レイティングデータベースを利用したSFS2.0は、無害な情報や有益な情報をフィルタリングする恐れがないという長所がある反面、新規ウェブページやウェブページの移動に対応しきれないという短所があり、レイティングされていないウェブページについてもリアルタイムでフィルタリングをかける機能が望まれていた。
 従来から提供しているレイティング方式に基づくフィルタリング機能に加えて、あらかじめ有害と判断する文字列を登録しておくことにより、ウェブページに含まれるメタデータ、検索エンジンに渡す文字列、あるいはURLに含まれる文字列によって、キーワードフィルタリングを行う機能を提供する。本機能によって、レイティングされていない新しいウェブページや移動されたウェブページについてもフィルタリングを行うことが可能となる。利用者によるキーワードの追加登録も可能である。

(3)SFS簡易設定機能
 SFS2.0は多機能であるため、コンピュータの取り扱いに精通していない管理者にとって設定が複雑であるという課題があった。そこで、管理者がサーバ型フィルタリングシステムを容易に設定することができる簡易設定機能を提供する。
 従来は複数の利用者の多段階管理やスケジューリング、プロファイルの詳細な設定機能など多機能であるがゆえ複雑だった設定機能を、基本的にはフィルタリングレベルのみを選ぶことにより、その他の設定は規定値で自動設定することにより、主に数人以内で利用する場合における管理の利便性を向上させた。

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付録

1.レイティング/フィルタリング方式

 レイティング/フィルタリング方式とは、一定の客観的基準(レイティング基準)で格付け(レイティング)しておくことによって、情報受信者がそのレイティング結果を利用して、受信者側の価値判断に従ってフィルタリング(通過させたり遮断すること)を行う方式である。
 レイティングには、セルフレイティングとサードパーティ・レイティングの2種類がある。セルフレイティングとは、情報発信者が自らのコンテンツに対してレイティングを行うことであり、表現の自由の見地からはもっとも問題が少ないと思われる。サードパーティ・レイティングとは、情報発信者以外の第三者が当該コンテンツに対してレイティングを行う方式であり、通常、レイティング結果を登録したレイティングデータベース(URLデータベース)を構築する。サードパーティ・レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数種類存在しても良い。そのような多様なレイティングデータベースからのレイティングデータを、フィルタリングソフトが受信者の設定に基づいて参照することによって、受信者が受信する情報、または両親や教師が監督下の青少年に与える情報をコントロールすることが可能となる。
 キーワードフィルタリング方式とは、有害なウェブサイトに現れる頻度の高いキーワード(またはその組合せ)をフィルタリングシステムの提供者または情報受信者があらかじめピックアップしておき、利用者がアクセスしたウェブページ等に含まれる言葉と上記キーワード(またはその組合せ)を照合することによりフィルタリングを行う仕組みである。
 また、ブラックリスト方式とは、青少年にとって有害なウェブサイトをリストアップし、それらのサイトにはアクセスできないようにする仕組みである。ホワイトリスト方式とは、青少年にとって有益と思われるウェブサイトをリストアップし、それ以外のサイトにはアクセスできないようにする仕組みである。

2.PICS(Platform for Internet Content Selection)

 PICSとは、ウェブ技術標準化団体であるW3C(World Wide Web Consortium)がインターネットの社会的責任を技術的に解決するために、1995年から、規制なしでインターネットアクセスをコントロールするために開発を進めてきた技術基盤である。PICSの特徴は、インターネットにおける情報発信を制限することなく、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的に情報を受信(フィルタリング)できるようにするところにある。W3Cは、実現するためのフォーマット等に関する標準仕様を規定するのみで、レイティング基準やソフトウェアを提供する組織ではない。それらは、外部の活動に任せられている。例えば、マイクロソフト社のブラウザソフトウェアであるInternet Explorer 3.0以降(6.0はバグのため未対応)には、PICS準拠のフィルタリング機能が組み込まれている。

3.ラベルビューロ

 サーバ型フィルタリングソフトがフィルタリングを行う際に使用するラベル(URLとレイティング情報をペアにした情報)を保持するデータベースサーバのこと。レイティングビューロとも呼ばれる。上記のW3CのPICSに準拠している。今回配布のラベルビューロには新レイティング基準SafetyOnline2を用いたラベルデータが蓄積される。

4.RSAC(Recreational Software Advisory Council)

  RSACは米国の非営利法人であったが、現在は平成12年に設立された国際的な組織(英国の非営利法人)であるICRA (Internet Content Rating Association)に吸収されている。RSACによるインターネット上のレイティング基準(RSACi)は、平成7年の通信品位法(Communications Decency Act)によるインターネット上のコンテンツ規制の動きに対抗するために提唱された。スタンフォード大学で20年以上にわたり、メディアが子供に与える影響を研究してきたDonald F. Roberts 博士の研究成果に基づいている。暴力、ヌード、セックス、言葉のカテゴリがあり、インターネット上のコンテンツが、各々のカテゴリに関して0から4までのレイティング値で格付されるようになっている。

以上