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最終更新日:2001-01-11

  "Java & Mobile" Winter Seminar in IW 2000
「PDAとJava」
生駒 孝夫(シャープ株式会社) [1. 資料 (PS(gz): 34KB, PDF(zip): 1897KB), HTML] 生駒氏

 パーソナルコンピュータやインターネットといったものが、われわれの社会生活のあらゆる側面を広く覆い、急速に浸透しつつある。そうしたなか、コンピュータ利用の局面をさらに拡げる、いわゆる“モバイルコンピューティング”が注目され、それを実現する主要なツールとしてPDAが本格的な普及の兆しを見せ始めている。この日のセミナーの最初のセッションでは、Javaプラットフォームでもある「Zaurus」を軸に情報家電分野で大きな躍進を続けるシャープ株式会社 情報家電開発本部の生駒氏から、PDAにおいてJavaが搭載されてきた経緯、およびその現状、さらには今後の展望について紹介された。

 周知の通り、PDA(Personal Digital Assistant)という考え方は、John Scullyによる「Newtonテクノロジー構想」にその端を発する。従来のオーガナイザや電子手帳との違いについて、生駒氏は「本質的にはマーケティング上の理由による呼称の違い」と前置きしながら、PDAのプラットフォームとしてのオープン性とコミュニケーション機能が装備されている点を指摘した。セッション前半において生駒氏は、このように情報家電として従来にない新しいコンピューティングを提供するPDAをめぐる現状と今後の方向性をおもにマーケティングの側面から概説した。

 続いて生駒氏は、PDAをはじめとする情報家電においてJavaが採用される背景についての解説を行なった。それによると、そもそもJavaはPDA、STB用の言語として開発されたものであったが、1995年のデビュー時には、折からのインターネットブームによって、とりわけアプレットという利用局面を中心に過剰にもてはやされ、さらには互換性や性能の問題から少なからず世の反発を招く結果となった。その後、サーバー用途を中心に実用化の時代が到来し、いま再び本来の情報家電の世界での受容期を迎えているという。もちろん、こうした組込み機器でのJavaの受容の広がりは、ユーザーニーズの多様化によるソフトウェアの大規模化、複雑化、あるいは製品サイクル、開発期間の短縮化、さらにはユーザーの不特定化による信頼性への要求といった要因を背景に、従来のアセンブラをベースとした開発では対応しきれないといった事情がある。

 さて、冒頭でも触れた通りシャープの「Zaurus」では、ハイエンドクラスのザウルスにPersonalJava実行環境のプロトタイプが実装されている。これに関連して生駒氏は、組込み機器、情報家電に向けられた、Javaの現行プラットフォームとなるJ2ME(Java2 Platform, Micro Edition)について、コンフィギュレーションとプロファイルという概念を中心にその概要を解説するとともに、「Zaurus」にPersonalJavaを採用した経緯、および現在の動作環境の詳細が紹介した。また今後の課題についても触れられたが、結局のところPDAを含む組込み機器では、メモリスペースおよび電力といった小規模のリソースと、機能およびパフォーマンスの間のトレードオフとなってしまうことなどが指摘された。

 最後に生駒氏からは、PDAとJiniをめぐる今後の展望が行われた。ここでもJavaプラットフォームに対してのPDA側のリソース規模の制限についての問題が浮上しており、それを解消するための方策として、「サロゲート(代理)・アーキテクチャ」と呼ばれるものが紹介された。簡単に言えばこのアーキテクチャは、PC等を代理でJiniネットワークに参加させ、PDAをこれらの機器にインターコネクトしてクライアントとして動作させるというものである。つまり、PC等による各種リソースの代理が可能になるわけだ。

 ともあれ、JavaはPDAをはじめとする組込み機器用途において、いまもっとも大きな期待を担っている技術だ。今回のセッションは、現状そこに横たわっている問題点と今後求められる技術的ブレークスルーを知る意味で、きわめて有意義だったと言える。


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