「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

②トラブル克服部門

gold最優秀 「『指一本』の日常から ―生徒と考えるインターネット利用とルール―」  神奈川県 角田 茉奈


最近、スマートフォンを使って24時間いつでも無料通話やチャットができるアプリケーションが普及し、多くの人に使われています。
塾で講師をしている私も例に洩れず、仕事の連絡や家族・友人とのコミュニケーションのために活用しています。

そして塾に来ている生徒さんたちもまた、そんな無料通話アプリの利用者です。

最近は中高学生のほとんどが自分用のスマホをいつでも持ち歩き、毎日楽しそうにLINEなどのアプリを使って友だちと交流しています。レスポンスの早いチャット機能は実際の会話のようにテンポ良く言葉が伝わるし、既読機能で相手が自分のレスを見たかどうかも確認できるせいか、生徒さんたちの間でも無料通話アプリの人気は絶大です。
生徒さんたちも電話やメールのようなコミュニケーション方法のひとつとして気軽に使っているようで、私にも「先生のID教えて!交換しよー!」と言ってくれる子もたくさんいます。

そんな経緯もあり、私も生徒さんたちに簡単な塾の連絡だったり勉強の質問に答えたり、をアプリを通して行っていました。
気軽で便利だなと思っていたのですが、同時にちょっと気にかかるところがあるな、とも感じていました。 こういった無料通話アプリ上でのネットトラブルに関してです。

実は私、小学生のときからインターネットに興味があり、当時ホームページを持っていました。その中でインターネット協会さんのネットマナー検定を受けて、そのおかげでネットに関するマナー・モラルについて、またネットトラブルについて学ぶ機会がたくさんあったのです。
今では社会人となり、ホームページを管理するまでは出来ていないのですが、日々進化していくインターネットの世界に「昔とはネットに関する常識が全く変わっているなぁ」といろいろ考えさせられていました。

だから塾の生徒さんたちのインターネット利用のしかたや、そこでトラブルが起こっていないかが気になったのです。
それから休み時間のときに生徒さんから「どんなアプリを使ってるの?」とか「どれくらい友だちとLINEで話してる?」など、さりげなくスマホの使い方について聞いてみました。

すると、「LINEは友だちと気軽にできて楽しい」というような声とともに「友だちからずっとメッセージが送られてくるから気になって他のことに集中できない」、また「既読が付いてしまうからすぐに連絡しないといけない」などの声が。更に「ちょっと目を離したうちに200くらいの画像とスタンプが来ていた」、「友だちとメッセージ送っていたら休みが終わった」というような言葉もあり、予想以上に利用状況に驚いてしまいました。

今までもケータイのEメールで「即返事絶対!」や、一日に大量のメールのやり取りをすることからインターネット依存になる事例も多くありました。ですが技術が進歩して便利な機能が追加された反面、こういったトラブルや依存が深刻になってしまうこともあるのだと感じました。

また、最近塾の授業中にこっそりとスマホを机の下で使っている子に注意することが増えていたのですが、どうやらそれも友だちからひっきりなしに来るメッセージに返信しているということも分かりました。しかも、同じ教室にいる子ともスマホでやり取りをしていたというから驚きです。

授業中にスマホを使っていた子に「なんでそんなにすぐ返信するの?終わってからでもいいんじゃないかな」と言ったところ、「時間が経ってからだと、流れについていけなくて話に置いていかれちゃうから」と返ってきたのには驚きを通りこしてポカーンとしてしまいました。 その時・その場所にいなくても後から確認できるというのもインターネットの良いところの筈なのに、これでは本末転倒です。

スマホも無料通話アプリも、インターネットそのものはとても便利で素晴らしいものなのに、人間が使い方を間違えてしまうだけでさまざまなトラブルに繋がってしまいます。
でも逆に言えば、使い方を間違えなければインターネットの良いところを存分に活用できるということでもあります。

そこで、まずは実験的に授業中は生徒さんたちのスマホやケータイを預かることにしました。あくまで「手元から離す」という目的なので、緊急時のためにも目に届くところに籠を用意してその中に置いてあります。
初めは嫌がる生徒さんたちも多く、「手元にないと落ち着かない」とソワソワしている子や「自分の物なのに管理されるのは嫌だ」と不満を口にする子もいました。

ですが、暫くそれを続けるうちに生徒さんたちの授業への集中力が少しずつ高まってきたのです。
集中力が高まれば、しっかりと授業に取り組む。しっかりと授業に取り組めば、勉強の理解も深まる。……というような好循環なのか、テストの点が全体的に少しずつだけど上がった!という生徒さんが少しずつ出てきたのです。

結果が出れば嬉しいもの。成績の伸びたある生徒さんに「頑張ったね!」と褒めたら、「塾でスマホやってなかったおかげ。家でも前ほどは使わなくなった」と自分から言ってくれたときは私も嬉しくなりました。
また、授業が終わったあとに「授業中は我慢した方がご褒美みたいな感じで楽しい!」という声があったのも印象的でした。

このように「使うときは使う、使わないときは一切使わない!」とメリハリをつけることで、少しずつでもインターネット依存を減らしていけるのかなと思います。今回の件で日常的なことこそ、意識的に取り組む必要性を強く感じました。特に未成年の子ども達などには、私たち周りの大人がしっかりと見守ってあげることが大切なのではないでしょうか。

現代は「指一本」でインターネットを通じて様々なことができる時代。時間や国境を越えて、たくさんの人と繋がることができます。
しかし同時に、便利なインターネットに頼りすぎて自分で「考える」機会を減らしてしまっているのかもしれません。これは子どもだけでなく、私たち大人にも言えることです。

分からないことがあれば、検索エンジンに単語を打ち込むだけでいい。知っている人に聞けばいい。漢字が書けなくても機械が正しく変換してくれる。

このまま時代が進んで更に技術が進歩し、機械が思考してくれるようになったら、私たちは考える必要すらなくなってしまうのでしょうか。

しかし、きっとそうではありません。
「どのように」「何のために」インターネットを利用するのかを考えれば、その方法は無限にあると思います。

まずは日常の中から見直して、考えてみること。
それがインターネット活用の第一歩なのではないでしょうか。




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