「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

②トラブル克服部門

silver優秀 「非現実の境界線とは」  東京都 弟子の弟子


私が中学2年生の頃の話である。

その頃、私はサービスを開始したばかりのパソコンの無料オンラインネットゲームに嵌っていた。 学校の友人から誘われたゲームだったが、オンライン上で他人と競い合うのが楽しくて、学校に行く時間と寝る時間を除けば、ご飯を食べている間もプレイし続けていた。 夜遅くまでネットゲームをやっていると、次の日の朝がとても辛い。 しかし、キャラクターのレベル上げを疎かにすることはできない。 無料で遊べるゲームだが、課金をすると効率的にレベルも上げられ、時間の節約にもなる。 小遣いを全てゲームに費やした。

それでもキャラクターは強くならない。時間が足りない。 やってはいけない事という自覚はありつつも、週に1日だけ、学校を休むようになった。 そうやってネットゲームの世界にじわじわとのめり込んでいった私は、週に1日、2日と学校を休む事が増え、気づけば学校をずっと休んでしまっていた。 両親には毎日のように叱られたが、 「そんなことはどうでもいい。ゲームの方が大事だ。」 と、学校を休んでネットゲームをやり続けた。

自分でも気づかぬ間に中学3年生になっていた。 誘ってくれた友人はとうにネトゲをやめ、受験勉強に専念していた。 私といえば、ネットゲーム内でも指折りの強プレイヤーになっていた。 ゲームをするためだけに生きている自分に、疑問を持つことはなかった。 「ネトゲ廃人」とはよく言われたものだが、今考えると、とても恐ろしいことである。

そうして中学3年生は、殆ど登校することなく終わった。 高校も適当な公立高校に入学したが、全く無関心であった。 入学式が終わってからすぐ登校することをやめ、中学生時代と同じネットゲームに依存する生活が続いた。 そうした生活を高校でも続けてしまった結果、案の定高校1年生の夏には留年が決まってしまっていた。

「どうせ在学していても行かないし、辞めてしまおう。」

ネットゲームによって人生が変わってしまった瞬間だった。 もう取り返しがつかないことには気づいていたが、それでも辞めてしまった。 高校をやめてから更にネットゲームをやり続け、気づいたら次の春がやってきた。

ふと気づく。 同級生はもう高校2年生かと。

改めて自分の生活を考えると、居た堪れない。 ゲームをするだけの機械になっていた自分は、時の流れをあまり感じなかったが、人生の一番大事な時期の数年を一気に無駄にしてしまった感じがした。 今まで自分のすべてだと思っていたネットゲームに一気に冷めてしまい、その日からネットゲームをしなくなった。

元の生活に戻すのは至難の業だった。 たった数年の生活ではあるが、生活が大きく狂ってしまっていたため、夜寝て朝起きるという当たり前の生活に戻すのにはとても時間がかかった。 そうして何とか社会生活に復帰するためアルバイトではあるが仕事を初め、最終的に高卒認定試験を取得し、同級生と遅れ無しで大学に入学することができた。

あの時のことは大学4年目の今でもよく思い出す。

「どうしてあんなにネットゲームに嵌ってしまったのか、どうして生活が壊れるほどやってしまったのか。」

あのまま今の今までネットゲームをやり続けたらどうなっていたかを考えると、恐ろしい。 現実と非現実の境目っていうのは、はっきりしているようではっきりしていない。 「所詮ゲームはゲームだろ。」と思っている人でも、このような生活になってしまうことは珍しくない話である。 そして、狂ってしまった生活を元の生活に戻すのはとても難しい。

今の時代は、スマートフォンなどのネットゲームが盛んであるが、これらも一緒である。 コンピューターじゃない、生身の人間とオンラインでゲームをするというのはとても楽しいが、これは非現実の世界である。 のめり込み過ぎて、非現実の人間になり、現実の世界にある自分の人生をめちゃくちゃにしてしまわないよう、注意しなければならない。


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