「インターネットの安心安全な利用に役立つ手記コンクール」
受賞作品

①使いこなし部門

gold最優秀 遠隔勤務  愛知県 森 あい

「私、結婚して県外に引っ越します。」
上司への結婚報告。「いつ辞めるの?」と言われると思っていたのに、上司の第一声は意外なものだった。

「じゃあ、どうやって仕事を続けようか?」
「え?会社はここにしかなくて、あとは営業所しかないですよ。私は営業じゃないですし。」
「じゃあ、最寄りの営業所で今の仕事を続けたら?」
予想外の展開に頭がついていかない。

私が働いているのは製造業の中小企業。工場は一つ一つ製品を手作りしていて、IT化とは程遠い。私の仕事は技術部の設計業務を早くする為に、自動設計の設定・改善をすることだ。入社して七年目。やりがいはあったが、引っ越すので結婚を機に退職を考えていた。転職したい一方で早く子どもが欲しい思いもあり、悩んでいた。

「そんなのやったことないですよね?」
「今時できるって。普段は営業所で仕事して、TV会議、メールとかを使ってみんなとやりとりしてさ。たまにはこっちに顔出してね。」
こともなげに上司は言った。

その後、パソコンの管理上、本社のパソコンを営業所のパソコンから遠隔操作で使い、今の仕事を続けることになった。総務部と勤務体系を決めたり、コンピューター室にパソコン設定をお願いしたり、色々な部署の人の協力もあり、順調に話が進んだ。本社で仕事をする最後の日。私は上司に素直な気持ちを伝えた。
「会社を辞めようと思っていました。うちの会社で、こんなことが実現すると思っていませんでした。」
「これからは、人材不足が大きな課題になるよ。君がいい一例となってくれればと思う。」

その後、営業所での勤務が始まった。毎週月曜日の八時半から、TV会議を使ってシステム会議。技術部からのシステム依頼は、電子文書管理システムで受け付ける。パソコンの遠隔操作は、心配していたよりもスピードに問題がなかった。月一回は本社での技術部研修会と改善会議に出席して情報共有。色々な仕組みを駆使して少しずつ回り始めた。

実際に、遠隔で仕事をしてみて変わったことが二つある。一つ目は直接顔を合わせない分、同僚との連絡はできるだけ早く丁寧にするように、気を遣うようになった。二つ目は週一回の会議があるため、仕事の報告をしっかりとするようになった。

最近は、子どもが産まれたらは在宅勤務もできるかもね、と上司と話している。
今回のことで、私は安易に言い訳をするのをやめた。遠くなるから、結婚するから、ここは中小企業だから。もはや、それは諦める理由にならない。やりたいことは、ダメ元でも口にしてみる。それが自分の人生だけでなく、未来の人々の人生の一歩につながっていくのだ。

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