報道資料
平成16年12月27日
財団法人インターネット協会

携帯電話において不適切な情報をフィルタリングする
デモンストレーションシステムの開発
−出会い系サイトなどへのアクセス制御の実現−

 近年、インターネットに接続できる携帯電話が子ども達のコミュニケーション手段として広く使われ、インターネット上の「出会い系サイト」を通じた児童買春等の犯罪が頻発しているため、法的規制のみならず、子どもが出会い系サイトへアクセスすることを制御するフィルタリング(選択遮断)のような技術的手段(付録1)の確立が望まれている。特に青少年健全育成条例でフィルタリングの活用を義務づける自治体が増えており、今般、東京都青少年問題協議会においても、インターネット・携帯電話からの有害情報に対する効果的な対策が検討されている。

 このような状況を踏まえて、財団法人インターネット協会(理事長:秋草 直之)は、総務省から委託を受けた平成16年度「モバイルフィルタリング技術の研究開発」プロジェクト(以下、本プロジェクト)において、携帯電話における出会い系サイトなどへのアクセス制御や子どもへの不適切な情報のフィルタリングに関する技術開発を推進しており、レイティング/フィルタリング(付録2)を支える基盤技術であるW3C(付録3)の次世代PICS(付録4)に関する国際レベルでの仕様策定に参画している。

 当協会では、この度、KDDI株式会社(以下、KDDI)およびボーダフォン株式会社(以下、ボーダフォン)の携帯電話向けに、インターネット上の不適切な情報をフィルタリングするための「SFSブラウザ」と「モバイルSFS」から構成されるデモンストレーションシステムを開発したので、公開する。なお、携帯電話におけるフィルタリング機能のさきがけとして、既に、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ(以下、NTTドコモ)の携帯電話向けに、インターネット上の不適切な情報をフィルタリングするデモンストレーションシステムを公開している(http://www.iajapan.org/rating/press/20030707-press.html)。

 今回公開するSFSブラウザは、KDDIのインターネット接続サービス「EZweb」上で動作するEZアプリ(Java版)として、またボーダフォン株式会社のインターネット接続サービス「ボーダフォンライブ!」上で動作するVアプリとして開発した。また、これらのSFSブラウザがインターネットへのアクセスの中継として利用する「モバイルSFS」(付録5)は、NTTドコモ向けのものを元に開発しており、それと同等の機能を有している。

 (注)EZwebはKDDIの商標または登録商標です。ボーダフォンライブ!、Vアプリはボーダフォンの商標または登録商標です。

 携帯電話でフィルタリングを行うために必要となるSFSブラウザの詳細については、以下のURLに掲載されている。なおこのページは、PCから閲覧できるように作られている。

 http://www.iajapan.org/rating/mobilefiltering/index.html

 SFSブラウザは、以下のサイトから携帯電話にダウンロードすることができる。

  http://rf.iajapan.org:8141/ez/SFSBrowser.html (KDDI au用)
  http://vappli.com/BPID100092/DID00100094/SFSBrowser.html (ボーダフォン用)
  http://rf.iajapan.org:8141/i/ib.html (NTTドコモ用)

 以下は、SFSブラウザを利用した場合の携帯電話のデモンストレーション画面である。

Menu
<デモサイトメニュー例>   
Block
<ブロック時の表示画面>


 (注)SFSブラウザはデモンストレーション用の試験版であるため、実際の携帯電話コンテンツにおいては、不適切なコンテンツであってもフィルタリングされないことがある。

 本プロジェクトにおいて、デモンストレーションシステムを一般に公開することにより、携帯電話事業者やフィルタリングサービス提供事業者の協力のもと、不適切な情報に対するフィルタリング機能の啓発及び機能の向上に役立てたいと考えている。また、保護者の協力のもとで子どもを対象に、携帯電話のコンテンツ・フィルタリングシステムを実際に使用してもらう実証実験を計画している。

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付録

1.インターネットにおけるフィルタリング

 インターネットにおけるフィルタリング(選択遮断)は、利用者(または親権者)が適切と考えるフィルタリングのレベルに合わせ、選択的かつ主体的に情報を受信でき、また、発信者の情報発信の自由を尊重しつつ、利用者の「知りたい」という権利と、「見たくない」または「(子どもに)見せたくない」という利用者の意志を、それぞれ尊重することができる利用者主体の情報システムである。

 詳細は、「フィルタリング情報ページhttp://www.iajapan.org/rating/」を参照のこと。

   

2.レイティング/フィルタリング方式

 レイティング/フィルタリング方式とは、ウェブコンテンツに対して一定の客観的基準(レイティング基準)で格付け(レイティング)しておくことによって、情報受信者がそのレイティング結果を利用し、自らの価値判断に従ってフィルタリング(通過させたり遮断すること)を行う方式である。

 レイティングには、自主レイティングと第三者レイティングの2種類がある。自主レイティングとは、情報発信者が自らのコンテンツに対してレイティングを行うことであり、表現の自由の見地からはもっとも問題が少ない。第三者レイティングとは、情報発信者以外の第三者が当該コンテンツに対してレイティングを行う方式であり、レイティング結果を登録したレイティングデータベースを構築する。第三者レイティングのデータベースは、異なる価値観に基づき複数種類存在しても良い。

 そのような多様なレイティングデータベースからのレイティングデータを、フィルタリングソフトが受信者の設定に基づいて参照することによって、受信者が受信する情報、または両親や教師が監督下の子どもに与える情報をコントロールすることが可能となる。


3.W3C (World Wide Web Consortium)

 W3C は、ウェブの発展と相互運用を確保するための共通のプロトコルを開発することにより、ウェブの可能性を最大限に引き出すべく設立された国際コンソーシアムであり、米国のマサチューセッツ工科大学計算機科学研究(MIT/LCS)、フランスに本部を置く欧州情報処理数学研究コンソーシアム (ERCIM)、及び日本の慶應義塾大学が、ホスト機関として共同運営にあたっている。


4.PICS (Platform for Internet Content Selection)

 PICSは、W3Cがインターネットの社会的責任を技術的に解決するために、1995年から、規制なしでインターネットアクセスをコントロールするために開発を進めてきた技術標準である。PICSの特徴は、インターネットにおける情報発信を制限することなく、受信者が設定するレベルに合わせて、選択的に情報を受信できるようにするところにある。


5.SFS (Server-type Filtering System)

 当協会が提供するフィルタリングソフトウェアで、クライアント(ウェブブラウザ)とウェブサイトの間の中継サーバとして動作する。SFSを経由してインターネットに接続しようとするすべてのクライアント(ウェブブラウザ)からのウェブページ閲覧リクエストをフィルタリングすることができる。

6.Safety Online 2

  当協会が制定したコンテンツの格付け基準であり、ウェブサイトの有害度に応じて0から4までの5つのレベルに分類している。数値が大きくなるほど、より有害なコンテンツを含むウェブサイトであることを示している。具体的な内容については、以下のサイトに掲載している。
  http://www.nmda.or.jp/enc/rating/rating_standard.html

以上