「今、インターネット上に氾濫する有害情報はどうなっている?
~子どもに見せたくない情報に対して出来ること~」

研究会レポートを掲載しました
当日配布しましたパンフレット「インターネット上に氾濫する有害情報は今、どうなっている?」はこちらから。
Webニュースにてセミナーの模様が報道されましたのでご紹介致します。
MSN-Mainichi INTERACTIVE (2005/03/25):ネットトラブルから子供を守るには
INTERNET WATCH (2005/03/24):Webサイトの削除をめぐる「表現の自由」~日韓で解釈に差

パネル スピーチ

 現在インターネット上には膨大な情報があり、子どもに見せたくない情報のみならず、画像や書き込みの中には大人でさえも見たくない情報も存在しています。一方、一見して思わしくない情報のように見えるものでも健全な情報もあります。
 これらの情報へのアクセスの問題について、実情に詳しいインターネット業界の担当者より事例を中心にお話いただき、私たちが出来ることについて話し合います。また、ブロードバンド先進国の韓国からも講師をお招きして、トラブル事例や啓発活動をお話いたしました。
 子どもに見せたくないサイト、参加させたくない掲示板などがあっても、それらを子どもから完全に遮断することは困難だ。有害サイトがあふれ、ネットトラブルが頻発している現在、子どもを被害から守るために、業界ができることは何か。セミナーでは、このテーマのもと、子どもを取り巻く状況を把握し、韓国の先進事例に学び、家庭や学校などと連携し社会全体でメディアリテラシーを高めていく必要が語られました。
日時:2005年3月24日(木)13:20~18:00
会場:東京アジュール竹芝 16階曙の間
主 催:財団法人インターネット協会
協 力:インターネットホットライン連絡協議会
委託元:経済産業省
「今、インターネット上に氾濫する有害情報はどうなっている? ~子どもに見せたくない情報に対して出来ること~」
「日本のインターネット有害情報事情」
【講師】財団法人インターネット協会 副理事長  国分 明男 氏   (講演資料 PDF:1.1MB)PDF

【講演内容】フィルタリング導入の重要性示す

 国分氏は「日本のインターネット有害情報事情」と題して講演。携帯電話を利用してネットに接続する人が急速に増え、動画利用もあいまって、ネットに起因するトラブルがより広範に拡大、増大しつつあることを示した。アダルトサイトに起因する架空料金請求の多発、コミュニティサイトに起因する長崎佐世保小学生殺害事件や、ネット集団自殺の増加、殺害予告や殺害依頼など。オンラインゲーム中毒や、迷惑メール、児童ポルノ関連事件も深刻だ。
 国分氏は、これらの有害情報から子どもを守る方法として、情報倫理教育を行ってアクセス管理はしないという選択肢、ブラックリストまたはホワイトリストを使ってアクセス管理を行う選択肢があることを提示。こうしたフィルタリングに関する理解を深め、青少年健全育成条例などと連携して導入を促進していくこと、ルール&マナー検定などを利用してメディアリテラシーを高めていくことが、次のステップとして重要であるとした。
「韓国のインターネット事情 ─ トラブル事例から対策へ」
【講師】韓国サイバー監視団(Korea Cyber Guard Association)
   理事長(CEO)ゴング ピョングチョル(Gong, Byung Chul) 氏   (講演資料 PDF:1.4MB)PDF

【講演内容】社会全体で取り組むクリーン作戦

 「韓国の健全なインターネット作り運動」について講演したのは社団法人韓国サイバー監視団のゴング・ピョングチョル理事長である。韓国では1993年頃からインターネットの普及が始まり、97年には一般化し、現在はネット利用者数3,158万人、利用率70.2%にのぼる。ゴング氏はブログやミニホームページ、フラッシュモブなど多彩な文化がネットで花開いていることを紹介。その一方、詐欺や犯罪も大きな問題になっており、これを克服するため、政府、市民団体、企業、マスコミが協力し合って「クリーンインターネット運動」を展開していると述べた。
 家族と共に取り組むことを重視し「パパとともにするインターネット教育」や「インターネット家族キャンプ」などの啓蒙活動が行われており、オンラインゲームに熱中する子どもを対象に、夜、一定時間になると回線が切断される「オンラインシャットダウン制度」もある。また、民間で監視活動が行われており、問題事項の申告受付や処理方法のシステムが整備されていることも紹介された。
「韓国のインターネット事情 ─ 子どもが楽しく安全に利用するために」
【講師】NHN Corporation
   CEO Staff Group Leader キム ジョンチョル(Ghim, Jong Cheol) 氏   (講演資料 PDF:1.1MB)PDF

【講演内容】業界の悩みと努力-禁則語の構築など

 検索ポータルとオンラインゲームコミュニティを運営するNHNコーポレーションのCEO Staff Group Leaderであるキム・ジョンチョル氏は、インターネット業界の悩みと、健全化のための努力事例について語った。
 政策や司法に関する悩みとして、法や基準が随時変更されるため事前準備が難しいこと、政策決定者のネットに対する理解不足、法機関の対応の遅さ、低い障壁で不良企業が参入して問題を起こせば規制がすべての企業に適用されることなどをあげた。企業間のサービス競争により収益性が悪化していることや、ネットへの否定的先入観を助長するネガティブな世論も、業界を悩ませているという。  こうした悩みを抱えながら業界は健全化の努力を続けており、同社が2002年に開始した「禁則語」施行はその一例である。社会や子どもに悪影響を及ぼす可能性がある言葉を集めて禁則語とし、検索などで使用不能とするもので、現在は他社にも適用されている。この他、掲示板の管理や著作権の保護、常設監視体制の稼動などの事例を多数あげ、安全なネット世界を作るためには、政府、業界、社会、家庭すべての努力が必要と結んだ。
パネルディスカッション
「今、インターネット上に氾濫する有害情報はどうなっている?」 ~子どもに見せたくない情報に対して出来ること~
コーディネータ:慶應義塾大学 大学院教授 苗村 憲司 氏
 パネルディスカッションは、まず5人のパネリストのスピーチから始まった。
パネリスト:警察庁 生活安全局情報技術犯罪対策課 課長補佐 中谷 昇 氏  (講演資料 PDF:1.1MB)PDF
【講演内容】出会い系サイト被害者の8割以上が児童

 同課課長補佐・中谷氏は、ネット利用犯罪において、著作権違反と児童買春が前年比で大きく増加したことを指摘。出会い系サイトに関係した事件では携帯電話利用が96%と圧倒的多数で、被害者1,289人の8割以上が児童、そのうち99%が女子であることを示した。警察庁は昨年4月にサイバー犯罪の捜査と予防を一体的に推進する情報技術犯罪対策課を設け、各都道府県警察のサイバー犯罪対策プロジェクトに対し指導、調整を行うと共に、ホームページ等を活用して広報・啓発に努めていると話した。
パネリスト:ニフティ(株) 法務部 課長 山下 康史 氏   (講演資料 PDF:307KB)PDF
【講演内容】違法・有害情報への対応

 山下氏はプロバイダの立場から違法・有害情報への対応について述べた。
事前の対策(予防の観点)として、フィルタリングサービスの提供や自衛の重要性を認識してもらうために保護者向の情報提供等を実施している。また、事後的な対応として、違法性が明らかな場合には会員に対し警告や削除を実施しているが、違法性の判断に苦慮することも少なくない。
 都の条例改正で今秋より事業者に対する努力義務が課されるが、山下氏は学校や家庭、公共機関も参画した総合的な取り組みが重要であり、事業者に対しては、業態に応じた自主的な対応がなじむとした。

パネリスト:インターネット博物館 代表 宮崎 豊久 氏
【講演内容】子どもを被害に巻き込む罠とは

 ネット被害の相談を受けるサイトをボランティアで運営する宮崎氏は、子どもがトラブルに巻き込まれる罠について例をあげて説明した。小中学生に人気がある掲示板に「一度でもOK、モデルのアルバイト」といった募集を出し、関心をもった子が引きずり込まれていく手口が紹介された。また、カメラ付携帯の普及でデジタル画像が簡単に流通するようになり、恋人に撮られた写真が脅迫に使われるといったトラブルも起きているという。保護者は子どもがネットで何をしているかを把握し、利用時間をコントロールする必要があると話した。
パネリスト:情報ネットワーク法学会 サイバー刑事法制研究会 主査代行
 弁護士 落合 洋司 氏  (講演資料 PDF:307KB)PDF
【講演内容】法的義務を課すより自主規制の支援を

 弁護士として同会の主査代行を務める落合氏は、子どもに見せたくない情報に対し、「表現の自由」や「通信の秘密」を勘案した上で何ができるかを考察。大阪府の残虐ゲームソフト規制やアメリカ、イギリスの例、都の条例などを参照しながら、法的規制や捜査機関による取締まりはネットでは限界があり、自主的規制を国家や自治体が支援するという方向が望ましいと結論づけた。
パネリスト:東京外国語大学 アジア・アフリカ言語文化研究所研究推進員
 猪股 富美子 氏  (講演資料 PDF:154KB)PDF
【講演内容】メディアに負けない子育てを目指して

 同研究所研究推進員で、メディアと教育に関する市民活動家でもある猪股氏は、有害情報対策とメディアリテラシーについて、とくに家庭・地域で何ができるかを中心に話した。
 問題解決能力やコミュニケーション能力、自己管理能力を身に付けることが人間作りとしてのメディアリテラシーであり、情報化社会に欠かせないライフスキルであると解説。家庭や地域でメディアに負けない子育て、人づくりをするために必要な具体策について語った。

【パネルディスカッション質疑応答】親の教育、規制と表現の自由など

 苗村氏は、子どもをネットのトラブルから守るには、家庭、学校、行政、社会が協力し合わなくてはならない、またフィルタリングは国民識別番号がない日本では子どもが年齢詐称をすると無意味になってしまうと話した。落合氏はネットの匿名性の良い点と悪い点を語ったうえで、フィルタリングは家庭の教育機能と組み合わせて使うべきとした。宮崎氏は親のスキルが子どもより低いため、フィルタリングが無意味になる場合があることを指摘。関連して韓国で実施されている母親・父親に対する教育が語られた。
 韓国の親日サイトが有害サイトとして閉鎖措置がなされたことについて、閉鎖に至る基準を問う質問が会場からあった。ゴング氏は、閉鎖された親日サイトとは日本に好意的なサイトというのではなく、過去の歴史認識において間違った情報を流す反国家的・反民族的サイトであるとし、そのような誤った情報を流すサイトを閉鎖することは表現の自由に抵触しないと考えると述べた。
問い合わせ先:財団法人インターネット協会/インターネットホットライン連絡協議会 

担当:大久保貴世

E-mail:seminar@iajapan.org

Tel:03-3500-3255 Fax:03-3500-3354


インターネット協会のページへ
Copyright (C) 2005 Internet Association Japan