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−迷惑メール対策編−
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迷惑メール対策に関する法令について
・迷惑メール対策実装における法的制約事項 (1.1)
・迷惑メール対策実装における法的制約事項 (1.2〜1.5)
・迷惑メール対策実装における法的制約事項 (1.6〜1.9)
・迷惑メールを規制する法律
・政府の迷惑メールに対する施策
インバウンドチェックの手法と手順について
■ 1. 迷惑メール対策実装における法的制約事項 (1.6〜1.9)

1.6. 正当行為という考え方

メールを提供する事業者が受信したメールを配送するにあたっては、宛先のメールアドレスをメールサーバが見て配送先を振り分けなければいけません。これは、厳密には通信の秘密を侵しているけれども違法ではないとされています。そのように、業務を行う上で必要な行為を「正当行為」といいます。

ただし、正当行為はその業務を行うにあたって必要最小限のことに限られますので、迷惑メールのチェック(たとえば送信ドメイン認証を使ったチェック)などは、現在では正当行為には含まれないとされています。なお、通信内容を見るのが人ではなく機械だから秘密を侵すことにはならないとは言えません。機械(サーバ)が見るのであっても、それは通信の秘密を侵すことになるとされています。

その他、通信の秘密を侵しても違法にならない場合には、通信両当事者の了解を得た場合があります。ただし、メールの場合は送信した時点で送信者の手を離れたものとし、受信側ISPの場合は受信者の了解が得られれば通信の秘密を侵すことは違法ではないとされます。実際、利用者(受信者)から依頼されてメールを配送するわけですから、これは当然のようにも思えます。

しかし、この了解は個別に明示的に行われなければならないとされています。電気通信事業者は利用者との間で約款(利用規約)という名前の契約書を締結しているとされますが、ここに書くだけでは完全に了解を得られたことにはならない、とされています。

送信ドメイン認証によるチェックを行うにあたっては、受信者から明確な依頼を受けたという形にすると良いでしょう。

1.7. 役務提供について差別的取り扱いを行わない義務について

役務というのは、サービスという意味を示します。電気通信事業者は、メールなどの各種サービスの提供にあたっては合理的な理由がない限り、すべてを公平に取り扱わなければいけません。たとえば、下記にある特定電子メールの送信の適正化に関する法律には、送信者情報を偽った送信の禁止の条項があります。

(送信者情報を偽った送信の禁止)
第六条 送信者は、自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として、電子メールの送受信のために用いられる情報のうち送信者に関するものであって次に掲げるもの(以下「送信者情報」という。)を偽って電子メールの送信をしてはならない。
一 当該電子メールの送信に用いた電子メールアドレス
二 当該電子メールの送信に用いた電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。)を識別するための文字、番号、記号その他の符号

ここでは広告宣伝のメールの送信者に関する情報、具体的にはヘッダー部などにある送信者を示すメールアドレスの情報として本物ではないものを入れるのは違法で、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処するとあります。しかし、このような違法なメールであっても電気通信事業者はそれをブロックすることはできないとされています。

1.8. 正当防衛、緊急避難という考え方

正当防衛とは、急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するためやむを得ずにした行為は違法であっても罪に問われないと言うものです(刑法36条)。緊急避難は、自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるためやむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しないというものです(刑法37条)。

迷惑メールに対する事例で緊急避難の概念が使われるのは、迷惑メールが自己の管理するサーバに大量に送信され、サーバがダウンするような場合に、そのメール送信元からのメールを遮断するというようなものです。緊急避難については「現在の危難」が要件とされるため、その危難が発生している間しか認められないとされています。ですから、これを理由に迷惑メール送信の拒否をできるのは非常に限られた場合になります。たとえば迷惑メールが送信されていると分かっていても、量的にサーバがダウンする程度に至らない場合は「やむを得ず」とは言えないので緊急避難にはなりませんし、サーバの危機が回避されたならば、その後からはたとえ誰がどのような方法で迷惑メールを送信しているかが分かっていても対処することは厳密には緊急避難とは言えなくなります。

平成14年に制定された特定電子メールの送信の適正化等に関する法律には、第10条に、電気通信役務の提供の拒否として、電気通信事業者は、「一時に多数の架空電子メールアドレスをその受信をする者の電子メールアドレスとして電子メールの送信がされた場合において、自己の電気通信設備の機能に著しい障害を生ずることにより電子メールの利用者に対する電気通信役務の提供に著しい支障を生ずるおそれがあると認められるときは、当該架空電子メールアドレスに係る電子メールの送信をした者に対し、その送信をした電子メールにつき、電気通信役務の提供を拒むことができる。」(一部略)としています。これでは、その迷惑メールについて、その送信がされている間しか対応することはできませんでした。

しかし、平成17年に改正された特定電子メールの送信の適正化等に関する法律では、その部分は第11条として、「電気通信事業者は、一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合には、当該支障を防止するために必要な範囲内において、当該支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。」と改正され、これを根拠に電気通信事業者も、より多様な迷惑メール対策を行うことが可能になりました(具体的にどのような対策を行うことが法的に可能かは、総務省総合通信基盤局消費者行政課にお問い合わせください)。

(電気通信役務の提供の拒否)
第十一条 電気通信事業者は、一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合には、当該支障を防止するために必要な範囲内において、当該支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。

法律本文についてはこちらをご参照ください。

http://www.soumu.go.jp/menu_04/s_hourei/new_hourei.html

1.9. 迷惑メール対策とフィルタリング

迷惑メール対策では、受信メールサーバでベイジアンやヒューリスティック、あるいは海外のレピュテーションDBやオープンリレーDBのブラックリストに基づくものなど、各種のフィルタリングを行うことがあります。通信の秘密の保護の対象はメールの全ての部分についても及ぶため、これらのフィルタリングは受信者の個別の同意がなければ行うことができないとされています。

Outbound Port 25 Blockingは、メールが送信される側のISPがルーターなどで行うフィルタリングの一種と考えられますが、これについてはISPの電気通信設備の適正な管理のための正当な行為であることから、違法性は生じないとされています。

 

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